第8話 バグの正体


「ここに到達できるのは君だけなんだ、『オーナー』」



オーナー。所有者。3次元世界を所有する権利を持つもの。言い換えれば、神様である。

響は王那の言葉により、自分が世界の半分の所有者であることを自覚した。


その瞬間、響の中に膨大な記憶が流れ込んだ。

所有権を得たことにより、3次元の世界にバグが起こったこと。

3次元世界の人間と4次元世界の人間の同数が入れ替わったこと。

そして、世界に施された「最適化」というシステム。


今まで起きた異変、つまり旗音がこの世界から消えたことやオトナと呼ばれる人間が出現したことは、これらの記憶を当てはめればすべてつじつまが合うのだ。旗音を含むこの世界の一部の人々が4次元へ移動し、同じ数の4次元の住人が3次元へ移動してきた。それがオトナ。世界がバグった原因は、全て響にあったのだ!


...いや、1つだけ説明できないものがある。糸葉のオトナ化だ。糸葉は入れ替わりで大人になったわけではない。


「君がなぜ『オーナー』になったか。きっかけは分かるかい?」


(オーナーになった、きっかけ......!!)

ああ、思い出した。2日前に触れた、Half of the Worldと書かれた自然石。

あの石に触れたことで、この世界のオーナーであった王那との契約が結ばれ、世界の半分の所有権が響に与えられたのだ。


「思い出したかな?あとは自分の目で確かめてくると良い。それに、糸葉ちゃんのこともね」


そうだ。糸葉だ。今すぐ家に帰って、もう一度あの場所へ行こう。


響は王那に、心から礼を言った。

「今日は本当にお世話になりました」

「またいつでも来るんだぞ」

王那は満足したようにうなずきながら答え、最後に付け加えた。


「それとひとつ。『オーナー』に関するすべてのことを、人に話してはいけないよ」

人差し指を口に当て微笑み、その逆の手を響へ振った。


 響が家に帰ると、家の明かりは消えていた。




小ネタ)

「最適化」システムについて説明します。

このシステムは2028年2月28日12:00~24:00の間に行われた「メンテナンス」のときに導入されました。これは、3次元世界に住む響たちの記憶がなかった時間と一致します。

最適化された例は以下の通りです。これ以外にもあります。

・世界の言語が日本語に統一

・「契約成立ディール」の導入

・入れ替わった人々への最適化(生活必需品の配布など)


世界の半分についてですが、これは面積などの物理的な半分ではなく、概念的な半分を指します。

難しい話ですね。自分で考えておいてなんですが、筆者もこれについてはよくわかりません。

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