第6話 契約成立(ディール)

~第5話までのあらすじ~

 ひびきの身のまわりで異変が起きた日の、学校の帰り道。響は途中に通る神社の前で、その違和感に気付く。階段を登り切ったとき、突然現れたオトナ。彼女はバグ調査組織RGBのリーダーかがり茶緒ちゃおと名乗り、4次元から来たことを響に教える。組織に連れ去られそうになる響の視界に入ったのは、1人のオトナの巫女みこだった。



 その巫女は、白衣と緋袴ひばかまに身を包み、白衣の上には千早ちはやをまとっている。神楽舞かぐらまいを舞う衣装だ。


「ま、とりあえず組織に戻るよ!」

「お待ちください」

 ひびきを連れて歩き出そうとする茶緒ちゃおを、その巫女が制止した。茶緒は巫女に気づいたようだ。


「...あんた、誰?」

 一瞬誰の声かわからなかった。茶緒だ。先ほどとは別人のようにトーンが低く、巫女をにらみつける顔がとても怖かった。


「初めまして。篝茶緒さんに国見響さん。私はこの神社に仕える巫女、神楽美心と申します。」

 そう言って彼女は、こちらに深々と頭を下げた。神楽美心さん。姿勢がとても美しい。いや、その前にだ。


「...なんで私の名前を知ってんの?」

響と同じ疑問をいだいた茶緒が問う。相変わらず、ご機嫌ななめのトーン低めである。美心はそれに答えず、鳥居から出て振り向き、深く一礼をした。顔を上げ、再びこちらを向く。


「篝さん。国見さんをおいて、施設へ戻りなさい。」


 驚いた。この人は組織のことまで知っているのか。


「嫌よ。響くんは私がもらうから。」

「...譲る気はないようですね。」


(なんかオレを取り合ってる~!この感じ、悪くない!)


 両者の間に対立の稲妻が走る中、響はそんなのんきなことを考えていたが、両者が同時に発した言葉により、現実に戻された。


契約成立ディール


 その瞬間現れたのは...椅子と机とトランプ!それに1人1杯の緑茶!ちゃんと響のぶんもある。

 響は理解した。決着はトランプでつけることを。茶緒は余裕な表情を浮かべ直し、運命を左右するゲーム名を宣言した。


「ババ抜きで勝負よ!」


 その瞬間、カードが自動で配布され、ゲームの準備が整ったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~

   ババ抜きゲーム中

~~~~~~~~~~~~~~~


 ゲームは終了した。

 結論から言えば、最初にあがったのは神楽美心だった。JOKERは3巡もしたが、彼女の表情の変化がほとんどなかった。ポーカーなフェイスである。一方で篝茶緒の、まあわかりやすいこと。最初に美心さんからJOKERをひいたとき「ひっ...」と声まで出ていたが、さすがにその時は美心さんも表情を柔らかくした。


 ゲーム終了後、パーティーセットは消滅した。茶緒は帰り際、少し顔を赤らめて言った。

「今日は私の負けだけど、今度はそうはいかないからね!」

「はい。励んでくださいね!」

美心さんは今日一番のはつらつとした声で、立ち去る茶緒を見送った。


(茶緒は案外潔いさぎよいんだな...)

 何はともあれ、平和に終わってよかった。


「さて響くん、行きましょうか。」

「......へ?どこへ??」

「神様のところへ、です」


...なるほど。平和に終わったわけではないようだ。



*人物*

神楽美心かぐらみこ:神社に仕える巫女。

国見響くにみひびき  :物語の主人公で、県内の高校に通う男子高校生。妹とアパートで2人暮らし。

国見糸葉くにみいとは :響の妹。県内の中学校に通う女子中学生。

・謎の少女  :10歳前後のお菓子好きな少女。

篝茶緒かがりちゃお  :バグ調査RGBのサードリーダー。

中野旗音なかのはたね :響と同じクラスの女子高校生。成績・人柄ともに良く、男女どちらからも人気が高い。

仕立したてハルヤ:響と同じクラスの男子高校生。響の仲の良い友達である。


*発生したバグ*

・空白の半日

 2028年2月28日の昼12:00~夜24:00までの12時間の記憶を持つ者はいない。

・国見糸葉のオトナ化

 国見糸葉は身長およそ230cmのオトナになった。

・中野旗音の消失

 2028年2月28日を最後に、中野旗音は姿を消した。

・神社の違和感

 ??????????

契約成立ディール

 4次元の住人は3次元世界において武力での戦闘を起こすことはできず、これに従い決着をつける。


篝茶緒の撃退に成功した響。

これにて一件落着...と思いきや、急遽きゅうきょこの世界の神様に会いに行くことに。


小ネタ)

今回の契約内容がトランプであったことは、実は偶然ではない。

なぜトランプだったのか、他にどんなゲームがあるのか。それが明らかになるのは、もう少し先のお話。


本話で登場した神楽美心は、響を「国見さん」「響くん」の2通りの呼び方で呼んでいる。


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