第2話 夫婦杉と自然石

~第1話までのあらすじ~

 兄・国見響くにみひびきと妹・国見糸葉くにみいとはは、ある場所を目指して山道を歩いていた。

その場所とは、昨年の隕石落下によりできた、直径10mほどの極小クレーターである。


 ちょうどその日、謎の少女はお菓子を食べながら退屈していた。



第2話 

「なぁ糸葉~?食事を英語で何でいうかわかるか?」

「食事は...え~と...ミート!」

「残念!ミートは肉だな~。正解はmealだ」

「おにいちゃんずるい~!」

山道を歩きながら話す2人。いつも通りの兄妹のテンションである。

「なんだよ糸葉~。英語のノートの表紙にでかでかと「ミートは肉!」ってかいてあったじゃないか」

「それでもわかんなくなっちゃうの~」

あまり勉強が得意ではないが、それも糸葉らしくて良いのだ。


 すると突然、糸葉が指をさした。

「あっ、おにいちゃん!あれ!」

「おわっ」


 その声に驚き、あらぬ声を上げた響は、目線をMAPから進行方向へ移した。その先にあるのは、画面という2次元の世界でしか見たことのなかった、あのクレーターである。響ほどの興味はなかった糸葉でさえも、その目で見る光景にはやはり見とれている。自然にたたずむ、宇宙の存在の証。2人は初めてカメラを持った子供のように、その景色をスマホに記録する。

「糸葉、ご飯はここで食べようか」

「そうだね!」

ふたりは近くのベンチでお弁当を食べることにした。


 先に食べ終えたのは糸葉だった。

「おにいちゃん、このあとどうする?」

「もう少し奥に行くと、隠れた名所「夫婦杉めおとすぎ」があるらしいぞ~?...行ってみない?」

「行く行く!」

少し早めの昼食を取り終えたふたりは、大きくそびえる2本の杉、夫婦杉へと向かった。


 やがて見えてきたのは、見上げるほどの2本の杉である。杉の周りには紙垂の垂れたしめ縄が巻かれており、杉同士もそれでつなげられている。これが夫婦杉。一目見てわかるほど、立派な杉だ。

 杉の足元に目を移すと、地中に半分ほど埋まっている、60cmくらいの丸い自然石がある。


(何か文字が書いてある...?)


響が表面に積もった土ぼこりを手で払うと、文字が書いてあった。


Half of the World


—————————

Yanu Sugino

—————————


(Half of the World...世界の、半分?すぎのやぬ...人の名前?どういう意味だ?)


 響が隣にいる糸葉を見ると、彼女もよくわからないという顔をしていた。二人は周辺を散策してみたが、さっぱり手掛かりはつかめなかったようだ。

「ま、何かしらの意味があるんでしょ!よし!戻ろう!」

「お~!」

 自然石の土ぼこりを手で払ったときにはすでに、12時を知らせる鐘が鳴っていた。バイクでの長い運転から旅が始まって、5時間近くが経過。疲れもあり、ふたりは考えるのをやめた。クレーターの場所に戻って少し休憩し、来た山道を戻りバイクのもとへと向かった。


 明日は月曜日。また、いつも通りの学校がある。




*人物*

国見響くにみひびき  :物語の主人公で、県内の高校に通う男子高校生。妹とアパートで2人暮らし。

国見糸葉くにみいとは :響の妹。県内の中学校に通う女子中学生。

・謎の少女  :10歳前後のお菓子好きな少女。


*発生したバグ*

・未発生


小ネタ)

夫婦杉は宮崎県高千穂町の神社に実在する。

その神社には「鎮石」と呼ばれるパワースポットもあり、この物語の肝となる場所である。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る