第1話 きっかけ

—2028年2月27日(日)正午—

 モニターの前で、「お菓子食べる~!」などと言いながら、すでにポテチ1箱をからにしている少女がいた。豪華に装飾された大きな椅子に座っている彼女は、少し退屈していた。画面越しに存在する世界のすべてを管理することに。


―2028年2月27日(日)―

 3歳年下の妹を後ろに乗せて、バイクをかっ飛ばす18歳の高校生がいた。国見響くにみひびきである。まじめな黒髪にヘルメットを被り、普段通りの私服である。

「糸葉!もうすぐ着くよ!」

 1度は訪れたかったその場所がいよいよ目前となり、興奮が高まってきた彼は妹の名を呼んだ。

「わかってるよ~おにいちゃん!」

 響の妹である国見糸葉くにみいとはは、バイクから落ちないよう全力で兄につかまり、はつらつとした返事を返す。糸葉は美人というよりかわいい系の顔をしており、兄とは対照的なおしゃれな私服で身を包んでいる。響はそんなかわいらしい彼女が大好きである。彼女もまた優しい兄のことを気に入っており、順風満帆じゅんぷうまんぱん兄妹きょうだい生活の真っ最中だ。


 さて、響が一度訪れたかった場所。それは隕石被災地である。昨年7月、飛来した小惑星が日本に落下した。被災地とはいっても人や建物への被害はほとんどなく、直径10メートルほどの極小クレーターが山のふもとにできた程度である。周辺に規制線が張られていた当初は、メディアによる報道で大きな話題となり、多くの観光客が足を運んだが、半年以上が経過した現在ではそれもまばらになった。響がここに訪れるのにここまで時間がかかった理由は、単純に都合とやる気の問題である。


 と、ここまで話したところで、響たちは目的の場所へ到着したようだ。太平洋沿いの一般道路から内陸へと向かい、兄妹2人で住んでいるアパートから3時間、景色は海から壮大な山の自然へと変化した。バイクを駐車し、ふたりはヘルメットとウェアを脱ぎ、水筒やお弁当など最低限の荷物をもって例のクレーターへと向かった。山道は舗装されており、あまり馴染みのない鳥のさえずりや川のせせらぎが、ちょっとした異国旅行を彷彿ほうふつとさせる。響は昨日印刷しておいたMAPを見ながら、糸葉はお気に入りのキャンディーをもぐもぐしながら緩やかな上り坂を進んでいく。



小ネタ)

国見糸葉をアナグラムすると…?

くにみいとは→みいとはにく→ミートは肉

前回の小ネタの答えは

くにみひびき→ひきにくびみ→ひき肉美味

となります。本作の略称であるハンバーグに関連した小ネタです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る