第5話 池上 賢治の話


美由紀が志帆に付き添っていたので、自分が義母の為に準備していた部屋に案内しました。あと、清潔なタオルや歯ブラシ、綿棒が欲しいと言われたんで持っていきました。


それから義母は夜通し、人形の手入れをしてました。時々、飲み物を持っていったりしたんだけど、きちんと手袋して丁寧に人形の顔を綿棒で綺麗にしてましたよ。


その後、追加でペンチが欲しいと言われて持っていったら、人形の胸に針が深く刺さっていて…。義母は時間をかけてペンチで針を抜き取りました。一度、自分が替わろうとしたけど、義母は「私がやらないと」て言って譲りませんでした。


義母が一通り作業を終えて、人形を見たんですが、申し訳ないけど逆に古めかしくなったというか…。なんか“普通の人形”になった印象でしたね。


それから義母は自分に人形とハンカチの上に置いた針を一緒に「お焚きあげ」するよう言いました。


なんでですかね…以前は人形から感じてた妖しさというか、生々しさみたいなものを、その針の方に感じました。

不思議ですよね。



翌日、お寺さんに「お焚きあげ」を依頼したら、すぐに来ていいと言って貰えて。

ただ、この日は害獣駆除の業者が来るから…て躊躇ちゅうちょしてたら、美由紀と志帆がスゴい勢いでキレてきて、怖かったですね。


結局は害獣駆除はキャンセルして、「お焚きあげ」に家族4人で行きました。

お坊さんも人形より針の方に注意を払ってて、それが印象的でした。


帰りに外食したんですが、お店に入ったら「5名様ですね」と言われて、お水も5人分出てきました。不思議ですよね。



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