第3話 池上 志帆の話
念願の新居に越して間もなく、父が突然、古びた日本人形を購入してきました。
父がリビングに入ってきた時、おかっぱ頭の着物を着た女の子の手をひいていた──ように見え、一瞬息が止まってしまった。
もちろん、そんな訳はなく、父は綺麗に包装された箱を抱えており、その中に人形は収まっていたのだけど、何故かそう見えたんです。
父が
最初は
天井からカリカリと音がして、キッチンの調味料がひっくり返されたりしたから。
でも、そのうち電気ポットが倒されてたり、冷蔵庫が開けられ、中が荒らされたりと
私は父ほど
そもそも新築住宅の
私はリビングのすみに置かれた日本人形と、よく目が合うことに気がつきました。
正確には視線を感じて振り向いた先に、必ずあの人形があったのです。
それから──。
深夜に廊下から子供が走り回るような、パタパタという足音が聞こえるようになりました。
お風呂場の鏡の端に、赤ちゃんの手くらい小さな手形がついてるのを見つけました。
周囲に誰も居ないのに髪を強く引っ張られるということが何度かありました。
そしてある日、洗面台の前に立っていると、後ろを小さな女の子が横切るのを鏡越しに見ました。うちに小さな女の子なんて居ないし、何より女の子は人形と同じ市松模様の着物を着てたんです。私はリビングに駆け込み、人形を
もう、限界です。
私は、両親には何も言わず独断で、人形をゴミ袋に入れると、わざわざ隣の地区のゴミ捨て場に持っていき捨てました。
その日、私は友人をつき合わせてカラオケで時間をつぶしてから帰宅しました。
今日は両親ともに遅くなる為、1人で家に居たくなかったのです。
私が帰宅した時、両親はまだ帰っておらず、家の電気は消えたままでした。
仕方なく自分で解錠して家に入り、リビングの電気を点けると、それが目に飛び込んできました。
テーブルの真ん中に捨てた筈の人形が置かれていて、こちらを見つめています。
私は、その場に腰を抜かしたように座り込みました。
人形の眼が、ゆっくりと大きく見開き、私を
私は自分の口から引き
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