第2話 金澤(旧姓 袴田) 千恵の話


妊娠がわかった頃から、悪夢をみるようになった。夢の中で、おかっぱ頭で着物を着た女性が、すごく怖い顔で追いかけてくるのだけど、その女性は、姉から貰った人形と同じ市松模様の着物を着ていた。


毎日同じ夢をみて、汗だくになりながら自分の悲鳴で目を覚ます。そんな状態が体に良いわけはなく、ほどなく流産してしまって……。


しかも、お医者さんから「もう妊娠は無理かもしれない」と言われ、夫婦で落胆し、声を出して泣きました。


そんな私たちを見かねて、親族が話し合い、遠縁の女の子との養子縁組を提案してきた。なんでも女の子の母親は出産時に亡くなっており、一人親となった父親は苦労しているとのことだった。


私たち夫婦は提案を受け、美由紀を養子として我が家に迎え入れた。そして、あの人形は処分することを決めた。


その頃、姉の千代子と話す機会があったのだが、姉はあざけるように

「誰かの代わりに結婚し、我が子の代わりに他所よその子供をつれてくる…まるで人形遊びのよう」

と言い放った。



それきり姉とは会っていない。

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