第3話 俺の能力を教えてください!
ギルドの中はあまり外の雰囲気と変わらなかった。真剣な目つきで掲示板に張り出されている依頼を確認している者、大きなテーブルで祝杯を交わしている者がいる。しかし、唯一違う点といったら受付にはバニーガールの姿をした綺麗な女性が二人いることだ。
「シス、スタ。この方、冒険者になりたいから手続きをしてくれる?」
「おおーーアマル会いたかったよ!」
崩した言葉で受付にいる女性にアマルは話しかけると、受付にいるバニーガールの女性一人が机から身を乗り出して彼女に勢いよく抱き着いた。
全く見分けが付かないほど瓜二つの容姿をしている。おそらく双子と考えて間違いないだろう。この二人を見分ける方法はあるのだろうか……俺はてっぺんからつま先まで舐めるように見る。左は貧乳、右は巨乳で覚えれば簡単だな。本人の前では絶対に言えないけど。
「離れて、スタ」
「もっと癒し成分を補充させて……」
「そうだよ、スタ。あまるんが連れてきたお客さんが待ってる……って、あんな出店広場で奇声を上げていた変人じゃん!?」
後ろで見守る女性は俺の顔を凝視すると、何かを思い出したかのよう指を差してきた。この声、どこかで聞いた覚えがあると思ったら……こいつら、俺が絶望している時に嘲笑い馬鹿にしてきた女性二人じゃねぇか!
まさか、こんな場所で遭遇するとは思いもしなかった。だが、変人というのは否定できなかった。だって、あれは誰がどう見ても変人なのだから。
「二人は知り合いなんですか?」
「いえ……」
「あまるん、いくら私たちでもこんな弱そうなダメ男に引っかかるわけがないでしょ!どうせ冒険者になりたいから、ギルドに来たんでしょ?けど、弱そうな見た目のあんたには向いてないわ」
相変わらず、鼻に着くような喋り方をするな。見た目で勝手に判断されることに腹を立てた俺は言い返そうとすると……そんな酷く言われる俺を庇うかのよう前に立ちアマルは口を開いた。
「スタ、見た目で判断しないの。冒険者に向いているなんて私たちには判断のしようがない。だから、この装置を使うんでしょ?」
そう言うと、アマルは奇妙の悪い顔をした石の彫刻に指を差す。あれテレビで見たことあるぞ、俺がいた世界では世界遺産に登録され観光名所にもなっていた。手を口に入れて偽りの心がある者は手首が抜けなくなると聞いたことがある。
「それはそうだけど……まあ確かに、それはアマルの意見が正しいわね。あんたあの口の中に手を突っ込んできて。多少痛みがあると思うけど我慢しなさい」
「は、はい」
なんで命令口調なんだよ。俺はお客様だから丁重に扱われる存在だと思うのだが……そう疑問に思いながら、俺は顔が彫られてある石の彫刻の前まで歩いていき口の中に手を入れた。
その瞬間、石の顔の瞳孔が大きく開き俺の親指から小指をじっくり味わうように優しく噛んできた。
気味の悪い顔が相まって、より気持ちが悪い。なんか湿った感覚もあるし、も、もしかしてベロで舐められているわけではないよな……。
「もう抜いていいわよ」
そう言われた瞬間、俺は反射的に手を抜いた。そして、早急に俺は反対の手で舐められていないか触って確認してみる。だが、全くと言っていいほどそんな様子はなかった。
「い、今ので何が分かったんですか?」
「メイさんの
「は、はあ……」
『能力の教えを乞うてきた者よ。望みを叶えてやろう。これが主の能力を表したモノである』
え、なんで喋れるの……?人間のように普通に口を動かして発音している。生き物ではなくモノなのに、どうやって口を動かしているのだろう。まさか本当に生きているのか、それとも魔法や呪いといったものでこんな状態にされてしまったのか。
「口から能力が書かれた紙が出てきますので受け取ってください」
『ペッ!こやつは非常に味が不味かったな』
口から丸められた紙を痰を吐くように出した。そんな汚い音を出すなよ。俺は床に転がった紙を拾い上げる。あの女を見返してやれるほどの能力であれ、と心の中で強く願いながら紙を広げると……俺は速攻でその紙から目を逸らした。
「ちょっと見してみなさい………やっぱり、あんた雑魚じゃん!私の目に狂いはないのよ!」
「そうですね。お世辞にも強いとは言い難い数値ですね」
後ろで覗き込むように見ていた二人は、俺の気持ちも考えることもなく率直に感じたことを直球で言ってきた。
【名前:メイ】 【筋力:1】 【敏捷:3】 【知力:2】 【幸運:0】【魔力:2】 【現在のスキルポイント:0】と紙には書かれていた。あまりもの低い数値に俺は現実から目を背けたくなり、紙をクシャクシャにしてその場から逃げるように去っていった。
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