第8話 多摩川大橋を渡る男の背中(不審者)








  国道一号を真っ直ぐ、時にリスナー様のギフトスタンプによって右へ左へ、くるくる回りながら前を向いて歩き続けているうちに、子安、あるいは新子安周辺のコンビニ利用権を賜り、あらカモもアルコール消費の権利を得たことで絶好調!


 次の休憩ポイントでもコンビニ行きの権利を挟みつつ、時々あらカモは消えてリスナーになったり、こっそりヤニカススポットである喫煙所を探したりしていた。


 雨は降ったり止んだりする一方で、コメント、ギフトスタンプ、スターは決して止むことなく、鶴見に差し掛かったあたりで腹を満たすべく、マックに入ろうかと思えば……うーん、営業時間外。


 参ったね、うつみーのリアクション的においしいっちゃおいしいけれど、それよりもご飯を食べておいしいっていう幸せが欲しいね。


 気を取り直して右へ左へ向いたりしながらくるくると歩き続ければ、遅い時間もやっているチェーン店を発見。


 そう、我らの味方、すき家だ。


 チー牛気分のおっさんにとっては最高の巡り合わせであり、すき家を毎日食べ続ければスターダムにのしあがれる……かもしれない、今の我々にとって夢の溢れる場所だろう。


 たくさん歩いたあとの明太マヨチーズ牛丼、最高だぜ!


 すき家でお腹を満たし、スターダムの夢を掴むべくして再び東京に向かって歩き始めたあらカモと、借金2500万円、35歳、昭和生まれの屈強な男の女子児童、うつみ・イ・ジョンソンは、川崎付近を通りすぎれば多摩川が目の前であった。


 多摩川にかかる橋、いわゆる多摩川大橋を渡って丁度真ん中あたりにある、案内標識に記された『東京都』、『大田区』の文字を確認したあらカモとうつみーは、ついにここまで歩いて来たんだという感動そのまま、はしゃぐ35歳のおっさん二人は高揚感をお供に心が踊ったのだ。


 もちろん県境を越える瞬間、あらカモの後ろ姿はうつみーに激写され、Xにポストされたのも当然の流れか、ドイツ連邦陸軍のトレンチコートを羽織った、白のパンツのおっさんは背中で語るただの不審者……ああ、背中でいったい何を語っているのか、私自身にもよくわからないね? HAHAHA!


 多摩川大橋を渡りきれば、私とうつみーの大好きなコンビニが、いつでも明るいまま迎えてくれる癒しそのものであり、当然コンビニ行きの権利をありがたく頂戴しつつ、買い物したり、またしてもあらカモが消えて突然リスナーになったり、この調子で東京を目指して再び前進していくのであった───。







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中学時代の友人がVライバーに転生して電凸をかけてきたので、今日から推し活とやらを始めてみることにした あら フォウ かもんべいべ @around40came-on-babe

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