第6話 事件は解決する!
「粉塵爆発の条件は揃っていたのだけど、【鼻】の力を使ってもう一つのニオイを嗅いだんだ。」
クインはもう一つのニオイを嗅いだというアドラの発言を聴き腕を組んで考えると一つの考えが生まれた。
「……そうか。それがお前の言っていた事故ではなく事件だと言う事か。」
「その通り。あとでそのヤギの姿を【眼】で見てみればいいんだけど、ニオイからプラスチックの焼けるニオイともう一つ、撥水スプレーのニオイがした事なんだ。多分格好は合羽を着た獣人。これは恐らくになるんだけど、この事件は計画されていたものだと思う。」
「合羽に撥水スプレーなんて普通のことではないですか?」
ノナがアドラに疑問に思ったことを聞く。しかし、アドラはまたしても人差し指を立てて「チッチッチ」と舌を鳴らす。
「撥水スプレーは可燃性のガスを含んでいるから引火しやすいんだ。おならで引火したものが合羽についた撥水スプレーに更に引火したというわけ。んで合羽に撥水スプレーだが、この合羽が新品のニオイだったんだ。」
「新品の合羽には既に撥水加工が施されているから必要ないってか。」
「あの……人によっては新品でもスプレーを撒くとは思うのですけど……。」
「今日の天気を考えてみなよ。こんなに晴れているのに合羽と撥水スプレーまでするかい?スプレーは効力が時間とともに落ちるんだから今の天気で使っても意味ないでしょ?」
ノナはカンカンに晴れている外を見て納得した。
アドラは納得したノナを尻目に推理を続ける。
「そしてライターの人間、そいつは協力者みたいなポジションかな?ライターで引火させるのが目的だったが中々火がつかなかったようだな。ボヤを起こす程度の事件だったはずが、まさかの粉塵爆発するとは誰も予想がつかないし、運が悪かったのか……。」
アドラはラムネ棒を箱から取り出して口の右端で咥える。「う〜ん」と背伸びをすると、鹿撃ち帽を被ってクインにビシッと人差し指を指す。
「これが今回の事件の全貌だ!」
「はいはい、分かったから。これは科学捜査班と連携して事件の再現をして証明するから、ノナさんは一旦釈放です。後日無実が証明され次第、お詫びとなりますがよろしいですか?」
ノナはそう告げられたが首を横に振った。
「わたしは寮に住んでいたので帰るところがありません。もう荷物も処分されてしまったと思うのでお金も住む所もないのですが。」
そういうとクインは困ってしまった。
自分のミスで無実の女性を家もお金も全て奪ってしまったのだから、罪悪感でいっぱいだった。
困っているクインにノナは近づいて耳元で囁く。
(クインさん、わたしをアドラさんの弟子入りに協力してください。)
(え!?まさか、冗談でしょう!?女性恐怖症で碌に何もできないですよ?)
(そこをなんとかこじつけてくださいよ!わたしの人生狂わしたんだから。)
(そ、そうですね……。なんとか交渉しますが、期待はしないでくださいね。)
クインはアドラの元に行きノナの弟子入り交渉を始めることにした。
「アドラ、彼女をお前の弟子にしてやってくれないか?」
「なんで?俺が女の人ダメなの知っているよね?」
「お前の名推理が彼女の中でかっこよく見えたんだそうだ。」
そう言われてアドラは照れたようで尻尾がフリフリと揺れていた。
もう一押しだと確信し、アドラに畳み掛ける。
「彼女をお前の助手として置いてくれれば、また今度の事件にお前を参加させるし、依頼料も少し上乗せさせてもらう。それで頼まれてくれないか?」
腕を組んで悩んでいたが、少し嫌そうな顔をして答えた。
「依頼料の上乗せと斡旋、約束破るなよ?その条件で飲んでやろう。絶対だぞ?」
「……分かった。まあ、獣人の保護という点でも依頼だから今度メシも奢るよ。」
喜んでいるアドラに背を向けて、ノナにサムズアップして了承のサインを送った。
ノナは走ってクインの耳元で囁く。
(今度からわたしを見るたびに戒めとして覚えておきなさい。)
そう言ってアドラの元へと走って行く。
「おっそろしいメスだな……。まあ、今回は自分が悪いからだけど。アドラ、お前を売ってしまってすまねえ。」
そう言って、三人は現場を後にした。
アドラとノナは離れていたがしっかりとついて歩いていた。
路地に入っていくと外壁が蔦に塗れたビルが一軒あり、その中へと入っていく。
八階建ての三階で突き当たりまで進むと扉が見えた。
アドラは鍵を開けて中へ入っていったのでついて入ると、そこがアドラの探偵事務所であった。
「わ……汚い部屋。」
「ししししょうがないだろ……。そそそ掃除が苦手なんだし……。」
「あの、明日は事務所の掃除をしても良いですか?」
「……どどどどぞう。」
段々口数が減ってきているアドラに少し笑みを浮かべ、クビになった会社の制服を脱ぐ。
「な!ななな何で脱いでるの!?」
「……別に下着になるわけでもないんだけど。もしかして……えっちなこと考えてましたか?」
「かかか考えてないし!!」
(中学生みたいな反応なのよね……。)
「めめめ飯を食いに行ってくる!へへへ部屋は好きに使って良いから!」
そう言うと走って外へ出て行った。
一人残されたノナは自分の寝床の確保をし、汚れたキッチンの掃除を始めたのであった。
この二人が出会ったことにより、さらなる事件に巻き込まれることをまだ誰も知らないのであった。
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