第5話 坂田歩いたぞ
サクラの両手を取りしばらく右足、左足とリズムをとる。
サクラは、だいぶん歩けるようになった。
僕はゆっくりと手を離した。
一瞬サクラは、ふらついたが右足、左足、何とか歩けるようになった。
「坂田歩けるぞ。」
「知ってる。見てるだろう。」
「坂田。よーく見ているんだぞ。」
サクラは、はしゃいでいる。
見ているだけで癒される景色だ。
雨上がりのアスファルト照り返しの光。
淡い桜の花びらがきれいだ。太陽の光で今日は五分咲きまで行きそうだな。
「早く満開にならないかな。」
歩いていたサクラが「時間がなくなる。今は満開は困る。」
「サクラ。お前は桜の木だろう。満開がいいに決まってる。みんな待っているんだろう。
花はちゃんと咲かせないといけないさ。サクラの怠け者め。」
一瞬サクラの足が止まった。僕も言い返されると身構えたのに、サクラの反論はなし。
「どうしたサクラ。黙っているとか、気持ち悪いぞ。」
「そんなことはない。」僕の足を蹴飛ばした。全然痛くはなかったが僕はおおげさに「いたたたたあー。」大げさに痛がった。「坂田、冗談はよせ。」そう言って、また歩く練習をするサクラ。
僕は少し見守ることにした。
サクラはふっと立ちとまり上を見た。
太陽の光が眩しい。きっとさっきの雨と頭を照らす太陽が桜の花達を目覚めさせる。
満開は今夜かもしれない。
『早く1人で歩けるようにならなきゃ。彼の自慢のお庭はすぐそこ。桜の花が散って終えば私は瘴気にあたって消えてしまう。時間がない。』
坂田が私を呼ぶ。「おーいサクラ、怠けるなよ。僕はずっーと見てるぞ。」
「坂田、わかってる。」
「手をかそうか?」
「いらないわよ。今は1人で大丈夫。」
強気の口調でサクラが言った。
「サクラ、」
前から子供連れてのグループがたくさんやって来て。子供が走って向かって来る。
「ドーン」サクラにぶつかる。
サクラはよろけて倒れる。
「サクラー」僕は駆け出し、抱き上げてた。
「大丈夫かサクラ?」「私は大丈夫。」
「なあ、サクラ、歩いて行きたいところがあるんだろう。僕が連れていってやるよ。時間がないんだろう。」
「いいよ。1人で行きたいの。」
「そうか?じゃあ近くまで連れていってやるよ。」
サクラが黙っている。
「コツン」僕はサクラの頭を軽く叩いた。
「生意気で口の悪いサクラが黙っているのは、似合わないぞ。言って見ろ。」
そんなはずはないと、願いながら「行きたいところは?男か?」
サクラが「うん。」と答えた。
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