第3話  歩いたサクラ

「とりあえず、サクラ両手をだして。」僕はサクラの両手をしっかり握り上に引き上げた。

サクラが立った。

「サクラ、靴がないから足の裏が少し痛いと思うが、我慢しろ。まず右足、前に出して。そうそう右手も同じタイミングで。」サクラの全体重が僕の両手にかかる。が軽い。「サクラいいぞ。次が左足を前に。そうして左手も前に出す。いいぞ。前に進んでいる。もう一度、今度は右足を前に出して。右手も前に。よし、上手だ。歩けてる。」

サクラはうれしそうだ。

しかし、裸足はさすがに可哀想だ。

「サクラ今日はもう遅い。明日また歩くの練習しようぜ。」

サクラは「時間がないの。」

僕は聞こえないふりをして「今日はおしまい。」

サクラの手に力が入る。サクラは元の桜並木の間に。

元の場所に戻ったせいか、急にサクラは強気の口調になる。

「明日、絶対だからね。約束よ。あと君、名前は?」

「僕は坂田。」「坂田ね。じゃ明日。それから坂田振り返らずに歩いて。5秒でいいから。じゃ、行きなさい。」

「サクラ、わがままだな。じゃ明日。」

僕は言われた通りに振り返らずに歩いた。しかし好奇心が5秒立った。振り返る。

サクラの姿はない。

サクラ、君は本当に桜の木なのか?

酔っている?いや違う。この闇夜に夢でも見たのか。僕は自分の手のひらを見た。 

さっきまで握っていた小さいサクラの手の力が残っている。

サクラは、そのあと桜の木に戻っていた。両脇の友人の桜の木たちが心配する。

「姉様。桜の木を抜け出し人間に変身するとお体に障ります。控えてください。」

友人の桜の木達が心配する。

「大丈夫。あなた達も知ってるでしょう。私は長くはない。もうすぐ本当に消えてしまう。消える前に桜の神様が少しの間、人間に変身できる力をくださった。

私は会いたい人がいます。長い時間が経っても、忘れない。

もう一度だけあってみたいの。彼のお庭はすぐそこ。池がありお山があり形のよい松の木も。彼の自慢のお庭を見てみたいの。」

「姉様。人間の命は短いと聞きます。私達も長いことこの風景の中にいますが、変わりました。見えにくい時間とともに変わっていきます。」

「心配してくれてありがとう。さっきの人間、坂田は、口は悪いがいい人です。」

「姉様も少々お言葉が乱雑でしたよ。」

「そうですか、つい、今の人間の言葉をと思い、話していました。私はもう少し坂田の力を借りることにします。今日は疲れました。お休みなさい。優しき友人たち。」

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