婚約破棄された悪役令嬢は課金でチート能力をぶっぱなす

@kanontan

第1話

「ノアマール嬢!君との婚約は破棄させてもらう!!」


「なっ・・・何ですって・・・!?」


そう高らかに宣言して、この国の王太子であるケンズィート様が私をビシッと指でさした。


指だけではない、ここはオーネガイー諸国の一つである我がパーオン王国の王宮の王広間で、パーティの最中なのである。もちろん他の参加者からの視線も痛いほど突き刺さっている。


婚約を破棄された事よりも公衆の面前で恥をかかされた、という事実にゴジッティータ公爵家の長女であるノアマール・ゴジッティータは身体をわなわなと震わせ、その顔は怒りで真っ赤になっていた。



「どうしてですの?一体わたくしが何をしたと・・・」


「自分で分からないのか?君はここにいるウイング伯爵令嬢を虐めていた・・・と、そう報告を受けている。胸に手を当てて、自分の行いをよく考えてみることだ」


そういうと、物陰からスっと出て来たウイング伯爵家の令嬢らしい女性が、ケンズィート王子にゆっくりと歩み寄り腕を組む。

ケンズィート王子はそっとその令嬢の肩を支えると、踵を返し私から足早に遠のいて行った。


しかし、私は見た。その令嬢が、振り向きざまに私にニヤリと勝ち誇ったような笑みを向けたのを。



「は、はぁああああああああああああ!?!?バッッッカじゃないのぉおおおおおおおおお!?」



言っておくが私は断じてそんな卑劣なことはしない。決して。

だって虐めなんてロクに人から愛されたことの無い、心が狭くて虚栄心の塊で道徳の枯渇した人がする事だと思っている。

聴衆の面前で婚約を破棄されたことに加え、私がそんな事をするような人間だと思われていたのも屈辱でしかない。

あのクソバカ王子、婚約者等と言いながら一体私の何を見てきたというのだ。許せない。


「道を開けなさい、わたくし気分が悪くなりましたので失礼させて頂きますわ!」


大広間から外への階段へ続く道を、ドレスをつまみながら小走りに急ぐ。

後ろからはザワザワとした声が未だに聞こえてくる。1秒でもこんなところにいたくない。


そして外の庭園に向かう階段の中盤に差し掛かった時―


「きゃっ!?」


履いていた靴のヒールが折れた私の身体は、宙に放り投げられ・・・


そこから先の記憶が、ぷっつりと途絶えたのだった。

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