告白
土曜日の部活の後、家に帰って…スマホを取り出す。
やっぱり、足立からの連絡は無く、スマホをベットに放って、そのままゴロンと寝転がった。
俺が誘いを断り続けた結果だから、連絡があるはず無いんだよ…納得の上だろ?って自分に問いかける。
夏休み中は、こういう土曜日午後に部活が休みの時は…足立の家に行っていたから。
寂しい…そっか、俺…寂しいんだ。
足立は、好きな相手に告白しただろうか?
俺に連絡が無いって事は、その子と過ごしてるんだろうな。
これで良かったんだと思う…
俺には充分な夏休みだった。足立と過ごした楽しさを、また別の誰かが感じるんだと思うと少し悲しいけど。
その時、下から…母の声がする。
「友達が来たわよ〜」
はーい…と、ベッドから身を起こし、返事をすると、階段を上がってくる足音がした。
あれ?俺、誰かと約束してたっけな…
コンコン。
「どうぞ〜」
返事をすると、扉を開けて入ってきたのは、足立だった。
俺の部屋に居る彼を、現実味の無いその光景を、夢かと思って凝視する。
「え?えっ?なんで?どうして?」
「七瀬の家、榊原に聞いた…勝手にごめん、どうしても話したくて」
立ったままの足立の表情は硬いまま、話し始めた。
「オレは…どうして避けられてる?」
絞り出すように言葉を放つ足立の顔は、苦痛に歪んでいるような表情。
どうして、そんな顔するんだよ…と思いながら答える
「避けてるわけじゃねぇよ?俺、ずっと足立を独占してたじゃん。優しいお前に無理させて、休みも付き合わせて、足立が好きな人に告白するのを邪魔してた気がしてさ…ちょっと身を引いてただけ。どう?告白できた?」
笑顔を無理矢理作って言うと。
「してない」
簡素な答えが返ってくる
「なんでだよ〜足立なら、絶対大丈夫だって、お前イケメンなのに、性格も良いし!好きにならない子なんか100%居ないって!連絡してみなって」
ほらって、何故か震える手で俺のスマホを差し出すと、グッと押し戻された。
そりゃそうか自分のスマホでするよな…って気付く。
俺、何がしたいんだろ…
「分かった」
足立は、決意の表情でスマホを操作し始める。
ついに告白するみたいだ…
途端に心がズキンって鳴る、俺が告白を勧めたくせにズキンって何だよ!と、自分にツッコミを入れる。
足立がゆっくりと耳にスマホを当てる。その美しい顔を眺めた。
すると、何故か俺のスマホが鳴った。
画面には、足立の名前…怪訝に思いながらも、通話ボタンを押す。
「オレは…七瀬が好きだ」
目の前からと、耳から伝わる声が混ざり、現実味を遠ざける。
え?は?今、俺を好きって言った?
スマホを持つ手は震え、真剣な瞳の足立を見ると、冗談には見えなくて、更には、友達として好き…とかの勘違いで無い事は、さすがの俺にも分かった。
続けて、今度は悲しげな目で問われた。
「七瀬の好きな人って誰?」
あ〜言ったなぁ〜俺。
すっかり忘れてたけど、虚勢から出た完全なる嘘。
「あ、それは…ウソなんだ。なんか、あの時は、居ないって言うのが格好悪い気がして…別に好きな人なんて…居ない」
「そうなん…」
明らかにホッとした表情へと変わる。
「でもさ、俺…オトコだぜ?」
疑問をそのまま口にした。
「知ってる…ごめんな、気持ち悪いよな」
どん底みたいな顔で言われ、大きな声で否定した。
「そんな事ない!だって、足立のキスは、気持ち悪いどころか!気持ち良かったくらいだから!」
あ、なんか…今、地雷踏んだ気がする。
次の瞬間、俺の背中は…柔らかな布に押し付けられた。
そう、ベッドに押し倒され、俺の両手は、足立の手によって、しっかりと布に縫いとめられていた。
目の前の足立を見つめると…
淫猥な瞳が光り、薄い唇が歪んだ。
「こんなトコで煽った…七瀬が悪いから」
耳元で囁かれ、更には二度目の、好きだ…ってセリフ。
唇が近付いたと思ったら…寸前で止まり
「キスしていい?」
これ、答えなくちゃイケナイわけ?というか、ちょっと期待してる自分が居るんだけど…良いよともダメとも答えられないまま、目を閉じた。
柔らかな物が触れたと思うと…角度を変えて、何度も何度も合わされる。
その度に身体のチカラは抜けて、代わりに背中が、ピリピリしてくる。
息継ぎの為に薄く開けた唇の隙間が、迎え入れたのは、空気では無く、足立の滑らかな舌で。
歯列をなぞり、俺の舌を絡め取ると、執拗なまでに追い立てられ、合間に盛れる自分の甘い声に、羞恥心と気持ち良さの狭間で揺れる。
声と共に、欲望が上がる。
余りのいやらしさに、身を引き、彼を押し戻した。
足立が離れると共に、口端から引いた糸が…プツリと切れた。
「もっ、もぅ、無理…キャパオーバーですっ」
肩で息をする程に、行為に溺れていたことを恥じる。
「良かった?」
なんて事聞くんだよ〜この人は!
そりゃ、良かったけど、問題は…そこじゃない!
「いや、そりゃ…まぁ…てか、俺、足立の事、好きだけど。友愛なのか、恋愛的な何かなのか…ごめん、分かんないよ」
「いいよ、別に。もう、吹っ切れたし、俺は、七瀬が好きだから、こっからは、遠慮なく押させて貰うだけだし」
蠱惑的な笑みを浮かべるイケメンの迫力…そして、手を取られ、甲に唇を落とされる。
王子様か!!!まぁ、似合うけどさ。
「あ、あの…足立くん?俺の太ももに…なんか、硬いの当たってる」
「そりゃ、好きな子と触れたら、硬くなるでしょ?」
他の子と触れても何の反応も示さなかったら、不能になったかもって思ったけど
ホッとしたよ。
と、聞き捨てならん事を言われ
「はっ?他の子とやったの?」
「あれ?ヤキモチ妬いてくれるの?向こうから、勝手にだよ。キスされただけ…全くなんともなかったし、七瀬には、これだから」
って硬いヤツを更に押し付けてくる。
もう、これだから、経験値の高い奴は!
プリプリしてると、ふんわりと抱きしめられた。
「覚悟しておいてな…」
って、耳元で囁かれ、恐れおののいた…のは、経験値ゼロの俺だった。
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