第12話 『ポケット詩集』

 詩は嫌いではない。

 というより、かくときは詩を意識している。

 散文であっても詩を志向している。

 技巧を凝らしたり、文体にこだわった詩ももちろん好きではあるが、いつも眺めるのは普段着の詩がいい。

 そこで今回紹介するのはそんな詩が詰まった『ポケット詩集』シリーズである。ⅠからⅢまで出ている。

 全くもって難しい詩は並んでいない。

 どれもがやさしい。

 ただし弱き易しさではなく強き優しさだ。

 それぐらい言葉に言霊が宿っている。

 「まえがき」には「人生の折々にこの詩は役に立ちます」みたいなことが書いてある。

 それぐらいバラエティ豊かだ。

 詩は「ほんとう」まで届いているという。

 確かに良い詩は時代を超えて通ずる「ほんとう」が書かれていると思う。

 愛に関するちゃんとした本を何冊か読んで少しはなんたるかを知り得ているので、そういう詩にはちょっとうるさく食いついてみるクセがある。

 そういう意味では、この本はかなり「ほんとう」である。

 だからといって気負ったり、襟を正して向き合う必要は全くなく、気軽にその日その時の感覚で付き合っていける手軽さでもあるのだ。

 内容的にはスケールが大きなものもあるにも関わらず。

 その点では全くもって、敷居を低くしてくれているありがたい本でもあるわけだ。

 私は『生きる』の

 “すべての美しいものに出会うということ

 そして

 かくされた悪を注意深くこばむこと”

 が好きだ。

 小さいながらもハードカバーのしっかりとしたつくりで、スピンもついているのもこじんまりとまとまっているのも可愛らしい。


 

 

 

 

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