セッション27 鉄拳
「え? 昨日追い出した?」
飯綱会首都・
ギルド受付嬢に指定された住所――三護松武が住んでいる
「おう、そうなんだよ。あの人、いつまで経っても家賃払わねえでさァ。うちだって高名な先生を追い出すなんて真似したかァなかったんだけど、こっちも商売なんでな」
「マジかよ……」
予想外の展開にステファと顔を見合わせ、困惑する。
「……賢者じゃなかったのかよ?」
「いえ、確かに彼は立派な方ですが……同時に金遣いが荒い事でも有名なのです。魔導書や邪神像を買い集めた為に生活費に困る事はしょっちゅうだったとか。行倒れになった事も一度や二度ではなかったそうですよ」
「あー……そういうタイプの狂人か。……しょーがねージーサンだな」
目先の欲に溺死する系の人だったか。魔術を習得するとSAN(正気)が減って発狂するからな。習得し過ぎて狂気が常態化したのだろう。発狂内容:
ちなみにステファの場合は発狂内容:強迫観念に分類される。
僕? 僕は狂ってなんかねーよ、ははは、嫌だなあ。ははは。
「えっと、どこに行ったか知ってる?」
「とりあえず昨晩は会長の家に行くっつってたな。古い友人なんだとよ」
「会長って……」
飯綱会の会長か。旧千葉県を治める首長。他国でいう所の王様に当たる人物。この国は王政ではないが、国家元首を血統で決めているのだから大差あるまい。
「さすが高名な賢者様。会長とも知り合いだとは」
「とりあえず、そちらに行ってみますか」
「そうだな。情報提供有難うよ」
「いや、それは構いやしねェんだけどよォ……あんた……」
「ん? 僕?」
宿屋の娘は僕を指差した。何だろうか。
「あんた、ひょっとして
「和芭様?」
聞いた覚えのない名前だ。
ステファと顔を見合わせるが、彼女も知らないようで首を傾げていた。
「違ェのかィ? いやァ、ウチは新参者なんで直接は知らねェんだが、和芭様ってのがいてだな……」
娘がそこまで口にした時だった。
「和芭ァァァァ! てめえ、どの面下げて帰って来たァ――!?」
と落雷みたいな怒鳴り声が飛んで来た。
何事かと思った時には眼前は拳で塞がっていた。強い衝撃が左頬を痛打する。身体が何メートルも吹き飛ばされ、とにかく殴られたのだと気付いた時には既に遅く。
僕は意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます