セッション19 車酔
ガタンゴトンと馬車が揺れる。
晴天の下、草原はさあさあと揺れる。剥き出しの土を馬車馬が蹴り上げ、ゆったりながらも前へと進んで行く。
そんな馬車の中で僕は、
「あー……きもっちわりー……」
車酔いと戦っていた。
「馬車ってこんなに揺れるんだな……そりゃそうだよな、舗装もされてねー道を動物が牽引する乗り物で行くんだもんな……そりゃ揺れるよな……」
「えっと、大丈夫……じゃないですよね」
そうですね、駄目ですね。
対するステファはまるで平気そうだった。やはりこの時代に生まれた人間は鍛え方が違う。でも、中身はともかく僕の身体だってこの時代のものの筈なんだけどな。馬車に対する意識の違いのせいだろうか。
「はい、『
淡い光が僕の体を包む。たちまち気持ちの悪さがフッと軽くなった。
「有難う。……車酔いって
だったらどこかで弱体耐性アイテムとか売ってねーかな。
「次の駅でなら商店もありますし、そちらで探してみましょうか」
「そうだな。すまねーな、迷惑掛けて」
「いえいえ。あ、停留所ですよ」
馬車が徐々にスピードを落とし、簡素な小屋の前で止まる。バスは駅以外にもこういった停留所でも停まる。草原以外には幾つかの家しかない何もない場所だが、ここから乗り降りする客もいるのだ。ダンジョンに用がある冒険者とか。
「乗りまーす」
今回の停留所でも乗客がいた。荷台に入って来たのは二人。荷台には既に多くの乗客がおり、座れる場所は少ない。その少ない座席――僕達の前の席に二人は来ると、
「すみません。御一緒しても良いですか?」
「ええ、構いませんよ。どうぞ」
ステファが促し、二人が座る。
そこでようやく二人の様子を観察しようとした時、気付いた。
「あ」
「あ」
乗って来た二人は金髪美少女とカソックの青年。
シロワニ・マーシュとナイ神父だった。
◇
「…………」
「……おい、いつまでむくれてんだよ」
ぷくーっと頬を膨らませるステファの横で溜息を吐く僕。
シロワニ達が乗って来た時からこの調子だ。これでもナイを認識した瞬間に即抜剣しようとした時よりかは落ち着いているのだが。
「仕方ねーだろ。ここで暴れたら他の乗客に迷惑が掛かる。つーか、最悪死人が出かねねーんだから」
「それは……そうですけどー」
むすっと顔を背けるステファ。やれやれだ。
一方の帝国二人組の様子はというと、
「お? やるか? やるのか~? んん?」
「……あまり煽らないで下さい、皇女殿下」
何か楽しそうだった。こっちもこっちでやれやれだ。
「そういえば、自己紹介をしていませんでしたね。私はナイ・R・T・ホテップ。帝国にて将軍と大神官を兼任しています」
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