第一部第二章 お使いイベント
セッション16 御使
「最近、ミスカトニック大図書館に通い詰めてるんだって?」
ある日、ギルドの受付嬢・今屯灰夜にそう言われた。
ローパー討伐を日々続け、ノルマを達成したので報告と報酬の受け取りに行った時の事だった。
「……通い詰めてるって程でもねーけど。何でそんな事知ってんだ?」
「面白そうな事に出会う為に普段からアンテナを広くしているのは当然の事だよ。で、どうして図書館に? 調べたい事でも?」
「……錬金術についてちょっとな」
僕は性転換の魔術を探している。
性転換の魔術は錬金術の最高位だ。色んな種族、色んな職業の者が集まるここ朱無市だが、最高位の錬金術師となるとさすがにいないらしい。
そこで自分で極めるべきかと思い立って図書館に行ってみたが、基本的な事しか書いていない本しか閲覧出来なかった。やはり専門知識というものは門外不出である様だ。
……いやもう本当、女性服が落ち着かない。
僕は着物を纏っているのだが(以前の服はボロボロだからとステファに買って貰った)、これがヒラヒラしていて心許ない。ちょっと激しく動いただけで生足が露出してしまいそうになる。怖い。
早く男に戻って男性服を着なくては。
「そんなキミにチャンスを与えよう」
「チャンスだあ?」
「うん。まあ。お使いに行ってきて欲しいんだけどさ。うん。
「運送系の依頼か。なんで僕達に? 普通に宅配ギルドに頼めばいいんじゃねーのか?」
宅配ギルドは各種輸送に関わるギルドだ。この時代の宅配業者なんて相手先に品が届くまで早くもないし、丁寧に扱ってくれもしないのだが、それでも僕達みたいな素人に頼るよりは良いと思う。
「届けて欲しい物がね、これなんだよ」
そう言って受付嬢が取り出したのは、一冊の本だ。
「魔導書か」
「そう、一級の危険物さ」
魔導書とは魔術の知識が記された書物だ。この書から『
実はかなりの貴重品で、図書館にも数冊しかなかった。一冊で億単位の値が付くものさえある。転写による魔術の習得はそう容易いものではないのだ。
「成程。危険物じゃ宅配ギルドが受け付けてくれない時があるものな」
魔導書はそれ自体が危険物だ。貴重品故に常に金目当ての裏稼業連中に狙われているというのもあるが、魔導書そのものに紛失防止の為の
「書の名前は『ネクロノミコン』――『死霊秘法』という意味だよ」
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