セッション7 神話
異世界モノにはありがちだが、この世界にも『冒険者』という職業がある。特定の仕事に就かず、その時々の依頼をこなす者。その日暮らしの無頼漢。己の実力のみを頼りにする何でも屋。冒険者とはいうものの別に四六時中旅に出ている訳でもなく、一所に定住している者もいる。
ステファもそんな冒険者の一人だ。
「私、実は他所の国の出身でして」
街中を歩きながらステファが自分の身の上を話し始める。
街には大勢の人間で賑わっていた。市国と名付けられただけあって朱無市国は領土面積はかなり狭いが国力は他国と比べても上位にあり、東日本にいる冒険者は大体ここを拠点としているという。
「へえ、朱無市国の生まれじゃねーんだ?」
「東北地方出身です。これでも公女なんですよ」
「公女か。お貴族様って事なんだな」
「はい。まあ、序列は低いのですが。それよりも『大帝教会』って御存知ですか?」
「いや、知らねー」
「そ、そうですか……私、信者なのですが……知りませんか、そうですか……」
「お、おう……」
僕が頭を振ると、あからさまにステファは落ち込んだ。
そんな顔されても知らねーもんは知らねーよ。一〇〇〇年前になかったもん、そんな教え。もしかして今のは常識だったのかな? だとしたら不味い事言ったか?
「あー……その、だな」
「……いえ、これも私の布教不足が故! 布教に掛ける努力が足りないのです! もっともっと精進せねば!」
などと困っている内にステファは一人で納得してしまった。追及されなかったのは幸いだったが、結構一人合点してしまうタイプか、こいつ。いや助かったけど。
「『大帝教会』は宗教の一つで、ノーデンスという神を信仰しています。ノーデンス神はこの世の『秩序』を司る神であり、秩序を求める者を守って下さるのです」
「ノーデンスか……。ふーん、ギリシャの
「ギリシャノゼウス? オーディン?」
僕の返しにステファがきょとんとした顔をする。
もしかしてゼウスもオーディンも知らないのか、こいつ?
「……なあ、ギリシャ神話や北欧神話って知っている?」
「? いえ、聞いた事ないですね」
「……そうか」
僕は
それが今は残っていないのか。よもやタイトルにすら聞き覚えがないとは、寂しい話だ。この時代、一〇〇〇年前の知識は残っていないと見るべきか?
「何ですか、それ」
「あー……いや、何でもない。話の腰を折ったな。大帝教会が何だって?」
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