第36話

 深夜三時、皆が完全に寝静まり、アキハバラの街頭も消えた頃、二人は門番のメイドから手に入れた鍵を使い、クラブを抜け出した。

闇夜に隠れながらこっそりとアキハバラを抜けて徒歩でみかこがいるというオチャノミズの病院まで移動していったのである。

 二人はまだ早い夜明けの街を歩いて、世界には萌香とジュンしか存在しないなんて考えた。

 もしかしたらこの世界には誰もいないのかもしれないなんて萌香は考えた。誰にも追われてなんかいないのに、その世界で、私たちは勝手に世界を歩き回って必死に逃亡して、小さなトウキョウの一部で逃げ回っているんだと考えると、なんだか楽しかった。

 それは、一言でいうと自由で、また一言で表すと孤独なのだが、チョコソースで汚染されたあのクラブの闇を知った二人はその世界を改めて自由であると前向きに考えることが出来たのである。

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