ーージュウヨンーー

第32話

 また一人取り残されてしまったみかこは、三分の一残った五号のケーキを見つめて思う。

 ふうん。そう言って、メグリちゃんもまたいなくなっちゃうんだよね。

 皆が戻ってくるなんてそんなのムリに決まっているんだよ……。

 にゃんは……、悲しい。

 お給仕でもないのにみかこはまたメイド服を着ている。出来ればずっと着ていたい。

 着替えをする時は、腹部の痣を見てしまって悲しくなるんだ。

 カワイイ服を着ている時だけはこんな自分さえも愛せてしまう。魔法みたいだよね。

「にゃんに頼れる大人なんて何処にもいなかったのにゃ……」

 みかこのにゃんという語尾もなんだか切ない。

 親にも見捨てられて、学校にも居場所がなくて、ただアキハバラという小さな場所でしか生きられない、放し飼い状態野良少女のみかこ。

 そんなどうすることも出来ない少女達は案外多いもので、少女たちは生きるために裏の社会へと足を踏み入れてしまうのである。

 ただ、もう少しだけ愛されたかった。

 愛されなくとも、もう少し大切に扱われたかった。

 大切にとは言わなくとも、もう少し当たり前の生活がしたかった。

 少女たちはただそれだけなのである。

 だけど……、無理だったんだよね。

 

ありがとう、でもごめんなさい。


 みかこは十八歳の誕生日を迎えたその次の日、自殺未遂をした。

 薬を過剰摂取して、メイド服を着て、ろりぃたいむで。

 気が付いたのはキイチで、急いでみかこを病院へ送ったが状態は危うかった。

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