第24話

「はあ……、どうして本当にやっちまうんだよ……」

 クイーンサイズベッドに仰向けになった幸崎が片手でティッシュを探している。

 ベッドの端に腰かける裸の萌香が、幸崎より先にティッシュを見つけ、幸崎に無言でティッシュを渡す。

「どうしてって言われましても……誘ってきたのは先生じゃないですか」

 何処でもない場所を萌香は見つめて話をした。

「そうだけど、三宮は真面目な方だと思っていたから最後までするなんて思わなかったんだよ」

「何をすれば終わりなのかわかりませんでした」

 言葉は純粋無垢だが、その体は今日汚れた。

 萌香がきょとんとしているので、幸崎は罪悪感を覚えて仕方がなかった。

「はあ」

自分を責め立てる幸崎。だが、間を開けてこう言った。

「三宮、また誘っていい?」

 萌香は少しぼーっとしていて、反応が遅くなった。

「え、はい」

 何となく考えて何となく答えた。

大切な思い出になると思っていた初めてが、今にも忘れたい不安に満ちたものになってしまった。

初めてセックスを経験した萌香の心には大きな穴が開いたのである。

 その穴は幸崎から貰う三十万円でも埋まることはないのだ。だが、萌香はその真実に気が付けないで、たった数時間で金と体の一瞬の快楽を覚えたつもりでいたのだ。

 それからというもの、萌香は頻繁に幸崎と会うようになり、そのせいでろりぃたいむをたびたび休むようになった。

「萌香さん、最近よく休んでいますけど何かしているのですか?」

 萌香とジュンのお給仕が重なっていた日、ジュンは萌香に訊いた。

「ちょっと学校の事で……」と、萌香はごまかした。

「頑張っているようでなによりですわね」

 萌香の表情がいつもと違った事から何か隠しているのでは、と疑いそうになったジュンだが萌香を信じることにした。


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