ーージュウーー
第20話
だめだ。このままではいけない。
ジュンの思考が巡る。
あおいの言葉の中に違和感のある台詞が混じっていたのをジュンは聞き逃してはいなかった。
自分の存在価値を値段で決めつけていたところである。あおいはまだ身売りをやめれていない状態なのではないか、とジュンは勝手に推測した。もう一点、ろりぃたいむが拠り所と言っていたのを思い出した。それなら身売りなんかに手を出さず、ずっとろりぃたいむに居続ければいいのに、と思ってしまったジュンだが、これはジュンの考えが単純すぎるだけなのだろうか……。
更にあおいの背負う、どうしても迷惑をかけてしまうこととは何かと疑問に思い、それを突き止めなければならないとジュンは焦燥した。
気が付いたらジュンは早朝の外へ飛び出していて、走ってあおいの後ろ姿を追いかけた。
あおいの背中を見つけて、ジュンは思わず声を掛けそうになったが、我慢をして影からじっと観察をすることにした。
やはり、あおいはただ帰るだけではなかった。
T字路を右に曲がったあおいは、ツインテールの女と合流したのである。
ジュンはあおいを待ち伏せていた女をじっと見て、僅かに古い記憶の中に眠る既視感を思い出したのである。
もう一度、ジュンはあおいを待ち伏せていた女の顔を見た。今度はさっきよりもじっと目を凝らすようにして。
ジュンは思い出した。この女は保坂の店へ初めて来店した時に、店に向かう途中で声を掛けてくれたメイドだったのである。そのメイドの名札には確か、おんぷと書かれてあった事も思い出した。おんぷ、おんぷ……、ジュンはその名を聞いて、暫く考えたが、何を考えたりなんかしていたんだと、ジュンは簡単なことに気が付いた。
あの時見たメイドはおんぷという女で、そのおんぷは誘拐され、だけど、誘拐されたおんぷは道端で女を連れ去り、今いるおんぷはメイドを引退したばかりのあおいと話をしている。
起きている事と考えている事が徐々に繋がっていく感覚がジュンの中で巡っていた。
それだけの情報が上がっているのに、おんぷという謎の多き人物。
そもそも、このおんぷというメイドは誘拐されたのでは?とジュンは疑問に思いながら、様子を伺っていた。
「おつかれおつかれー、はい、これ言ってたやつね」
おんぷがあおいに可愛いキャラクターが描かれたポチ袋を渡す。
あおいはその中身確認して、「ありがとう」と一言いう。
袋の中身は十万円だった。ポチ袋の中身が十万円というところまではわからなかったが、札が入っているという事をジュンはその眼で見た。
「まさかあおいちゃんがコッチ側に来るとはね」
「ハハ……、また、お世話になることになるとはね、よろしくだよ」
あおいが枯れた声で笑う。
やはり、ジュンは声を掛けようか迷った。
だが、二人が周りを気にしだしたので、ジュンは更に身を潜めた。
二人はそのままどこかへ行ってしまい、ジュンはそれを見送ることまでしかできなかった。
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