ーーキュウーー
第18話
あおいがお給仕を休んで二週間が経った。
その日はリリアが休みで、店の営業中、リリアはケーシ君と店外デートをしていた。
ご主人様達と関係を持つことは禁止事項なのだが、いつも大金を使ってくれるケーシ君を逃すまいと、リリアは積極的にケーシ君との距離を詰めていたのだ。
リリアはお互い楽しんでデートをしているつもりであった。
だが、ケーシ君は言った。
「リリアちゃん、俺、結構支援してきてるよね?俺はリリアちゃんともっと仲良くなりたいと思っているんだ。だから、次からはお小遣いとかなしに普通に会わない?その方が、もっと仲良くなれる気がするんだよね」
リリアはその言葉を聞いて、今まで好印象だったケーシ君の存在が、一瞬にしてどうでもよくなってしまったのだ。ケーシ君だけは他のご主人様と違うと思っていたが、そこらへんにいる男と一緒なのだと、その時、リリアはようやく気が付いた。
私はケーシ君に好意を抱いていたわけではない。ただ、ケーシ君という男を利用しようとしていただけなのだ、と。
リリアは提案を曖昧に濁すように断った。
「そっか、それじゃあ、もうリリアちゃんを応援するのはやめるよ」
悲しい言葉を置いてケーシ君は一人で帰っていき、リリアを一人ぼっちにさせた。
本当は明日もケーシ君はろりぃたいむへ来てくれる予定だったのだが、それもパーになった。
ふと客を逃してしまったショックはあるが、また一から大金を使ってくれるご主人様を探せばいいと、リリアは呑気に気持ちを切り替えていた。
そして、ケーシ君とはそれっきりのことだと思っていたのだが、それはちょっと違って、寧ろ厄介なことになりつつあった。
ケーシ君はお店に来なくなったが、リリアが送る日常生活の中に新たなケーシ君の影が現れ、リリアはその視線を感じるようになったのだ。つけられて監視されているような感覚だった。
誰か(ケーシ君)に見られている、とリリアは怯えるようになり、段々と周りの視線を気にするようになっていき、仕舞いにはリリアは家にこもり店に出勤しなくなってしまった。
流石にキイチも焦り始め対処を考えた。だが、在籍するメイド達のメンタルケアをするのではなく、キイチは新人キャストを集めることを選んだのである。
萌香とジュン、みかこの三人だけになってしまったその日。
みかこ推しのご主人様、キクリンがメイドカフェへ入国してきた。
「最近、随分メイドちゃんが減ったよね、皆、辞めちゃったのかな?」
「そうだねぇ、みんなどこに行っちゃったんだろう、寂しいにゃぁ。でもにゃんはココが好きだから当分は離れたりしないにゃ。キクリンは安心してにゃんを推してくれにゃぁ~」
にゃぁにゃぁ言いながらご主人様に甘えるみかこ。例えるならその声は猫なで声だ。
「ホント、みかこくんはネコだなぁ。それも甘えるのが上手だからちょっとぐうたらな気ままなネコ様。いつも差し入れはグミだけど今度は本当にチュールにでもしてみようかな……」
と、キクリンが笑いながら話す。
ろりぃたいむでは、いまだに平和ボケした会話が繰り広げられているが、これは、ご主人様達を心配させないようにというネコなりの気遣いなのだ。
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