第4話
「京浜東北のオオミヤ行きに乗りますわ」
駅まで着くと、次にジュンが米田をエスコートをして、二人は手を繋いで改札を通った。
また無意識のうちにジュンと手を繋いでいることが米田は慣れないな、という感じでドギマギしていた。
電車に乗って、二人はオオミヤまで行くこととなった。
電車の中でジュンは必要以上に視線を集めていたが、そんなの気にする素振りなんてしなく、椅子が埋まっていたので、米田は自分の体格の大きさを利用してジュンを隠すように立っていた。
「どうでしょう、美能さんたちいるかしら」
「まあ、会えなかったら仕方ないですしそのまま帰りますよぉ。僕の本来の目的はジュンさんを家まで送り届けることですしぃ」
「よねくんって、そういうところ紳士よね。好きよ、そういうの」
ジュンは口に手を当ててクスっと笑う。
米田はそれを見て暫く心の内で、何でこんなに可愛いんだ……、と悶えていた。悶えていることを必死で隠そうとしたが、顔に出ていたようだ。
「よねくん、顔が赤くなってるわよ、可愛いわね」
ジュンがにやりと笑う。
「そ、そんなぁ、は、恥ずかしいんであまり見ないでくださいよぉ」
汗を拭いてごまかす米田。
そうしているうちに、電車はオオミヤに到着した。
十分ほど歩くと、小さなボロ家が見えてきて、米田はまさか、と思ったが、ジュンは何のためらいもなしにそこへ向かって、玄関の前で立ち止まった。
「ココ、ですか?」
「ええ、きっと美能さんたちもいると思うわ。さあ、入って」
「は、はあ」
百二キロの巨体が床を歩くと底が抜けそうで、米田は軋む床に怯えながらゆっくりと歩いていった。
「あら、ジュンちゃん、今帰ってきたのね。隣にいるのはいったい誰かしら?」
出てきたのは、ジュンの先輩美能陸の更に上司のミチさんというオネエのベテラン探偵であった。
「ミチさん、ただいまですわ。こちらは私の恋人ですわ。あれ、美能さんたちはご不在ですの?」
「いなくなった猫を探しに行ったようよ」
ミチさんが壁に寄りかかって口紅を塗りなおしながら雑に答えた。
「そうですか、それは残念ですわ。よねくん、今日は美能さんたちとは会えそうにないみたいで、ごめんね。でも遠かったのにココまで送ってくれてとても感謝しているわ、ありがとう」
「いいえぇ、良いんですよぉ。美能さんたちは外へ出ているようですし、僕はここらでお暇しますよぉ、また今度ですぅ」
そう言って米田は、来た道を戻って、更に電車に二時間程揺られてカナガワへと帰っていった。
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