第57話 憤怒も嫉妬も狡猾も全てを超える男
ルシオによってジェイミが特別観覧席へと運ばれてくる。
「ジェイミ!」
私はすぐに駆け寄り魔法杖を構える。
「さくら、ジェイミの体力がかなり削られているから、まずは初級魔法で少しずつ回復していけ」
と、クロード。そうだ、白魔法は被術者の体力を使って傷を治すから、重症だからって上級魔法を唱えれば良いんじゃないんだ。
「うん、分かった」
「さくら……」
「ジェイミ! 今回復するからね!」
「さくら……膝枕、して……」
「……え?」
「膝枕しながら、回復されたい……」
その瞬間周りからはふっと吹き出す声が聞こえてくる。
「やっぱ元気そうだな。精神へのダメージは無傷だなこりゃ」
と、ジャン。
「そんなこと、ないよ……。僕すっごく傷付いたから……さくらの膝枕がないと……死んじゃう」
「わ、分かったよ……」
私が横座りをして血だらけのジェイミの顔を膝へ乗せる。
すると、ジェイミは血まみれでえへへ~とはにかんだ。いや、普通にホラーなんですけど!?
⸺⸺初級単体白魔法⸺⸺
「ヒール!」
「はぁぁ~。癒やされるぅ~」
ジェイミはそう言って膝に頬を
「血ぃ
「あっ、ごめ……あー、ワンピース血、付いちゃったね……明日一緒に新しいの買いに行こ」
「お前わざとだろ」
と、ジャン。
「え、そうなの!?」
「さて、何のことだか~」
「ま、何でもいいけどよ。さくらめちゃんこ心配してたから、何であのまま試合続行したのかちゃんと教えてやれよ?」
「そうだよ、ジェイミちゃんと話して?」
ジャンに続いて私もそう問いかけると、ジェイミはうんうんと頷いた。
「あいつら、何考えてんのか知らないけど、普通に観客席からも見えるようなところで裏魔法使ってたでしょ? 誰かさんが一戦目瞬速で居なくなったせいで、試合開始してからじゃ間に合わないと思ったのか、舞台に上がった瞬間に拘束された。アウラの発動も出来なかった。だから、この時点で僕はもう肉を切らせることにしたんだ」
「肉を切らせて骨を断つ……?」
「そう。目的の1つは、王都ライヴィリアのコロシアムの情報はラメール王国にも届いてる。だからリュカのお父さんにあの不細工兄弟がめちゃくちゃやってる事実を叩きつけること。2つ目は観客を完全に僕らの味方に付けること。そっからのレオンの大反撃。盛り上がると思わない?」
「ジェイミ、そこまで考えて……?」
「骨を断つのは僕の役目じゃなくていい。僕ら3人で1つのチームだから。僕はね、さくらみたいに優しくないから、半殺しじゃ終わらせない。あいつら全員王族の立場から引きずり下ろして、没落貴族となった先でも居場所なんて与えない。あいつらはこれから周りから石でも投げられて生活するんだろうね」
「ジェイミ……“
「それに、こうやってさくらに心配してもらって膝枕で白魔法とか最高じゃない? ジャンに独り占めはさせないからねーだ」
ジェイミはジャンの方を向いて舌をベーッと出した。
「お、イチャイチャしながら観戦してたら嫉妬されてんじゃねぇの」
ジャンはそう言ってニッと笑った。
「憤怒も嫉妬も狡猾も、全てジェイミが彼らの上をいったな……」
と、クロード。なんか上手くまとめられた~!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。