第54話 本気のジャン

⸺⸺コロシアム⸺⸺


 本日もコロシアムは超満員。まさかこんな短い期間で2回もコロシアムに通うことになるとは……。

 前回のクロードの戦い同様、私たちは王の方々と共に特別観覧席で試合を見ることとなった。


 試合に出るジャン、ジェイミ、レオンは南側の入場口ですでにスタンバっており、北側にはラメール5兄弟が全員控えていた。

 やっぱり妹たちもあそこにいるんだ……。何だか嫌な予感がする。

 ジャン大丈夫かな……。


 そんな心配をしていると、また意気揚々と実況が始まり、ジャンとグリードが舞台へと入場する。

『……ルール説明は以上だぁ! 第一戦、先鋒せんぽうはジャン・グランホークvsバーサスグリード・ラメール! 槍と大剣の物理のガチンコ勝負だぁ!』

 わーっと湧く会場。


 あんまり触れたことがなかったけど、ジャンは槍を使う。いつも動きが速すぎて、ついていっても何が何だか分からないうちに魔物が消えていくから、実はあんまりちゃんと見たことがない。

 今日はちゃんと目で追えるといいな……。


 審判によって、試合開始の合図がされる。

「それでは、試合を開始して下さい!」


 その瞬間、ジャンの姿が一瞬で居なくなる。入場口の2人の姉妹は魔法杖を構えるものの、標的がいなくなりキョロキョロとする。ほらやっぱりなんかズルしようとしてた!


『おーっと、いきなりジャン選手の姿が消えたーっ! どこだ、一体どこにいる!?』

「クソッ……!」

 グリードは焦ったようにキョロキョロしている。


「ど、どこどこ?」

 私も一緒になってキョロキョロしていると、クロードに「さくら、上だ」と言われ、シャーロットと共に天を仰ぐ。

「あ、本当ですね、お空にいます!」

 と、シャーロット。

「うわ、眩しい……!」


 ジャンは空高く飛び上がり赤いオーラをまとっていた。

「おい、上だ! 構えねぇと死ぬぞ!」

 ジャンはそう叫んでグリードに上を向かせると、槍全体に稲妻をまとい、雷属性のジャンの大技が放たれた。


⸺⸺奥義 天迅御雷神てんじんみかづち⸺⸺


「ひっ……!」

 咄嗟に大剣で頭を庇うグリードに、すさまじい音を立てながら裁きの雷のようなジャンの槍が降り注いだ。


「か、雷が落ちた……」

 私は唖然とする。

「さくら、正確に言うと、電撃を帯びたジャンが雷の様に急降下した、だ」

 と、クロード。

「うん、解説ありがとう……」


 あまりの一瞬の出来事にしーんとなる会場。審判も唖然としており、ジャンがバク転でグリードから距離を取ると、グリードの大剣が粉々に砕かれていき、刃のない剣のつかを握りしめたグリードが黒い煙を出しながら白目を向いて仰向けに倒れていった。


 心なしか焼き魚の匂いがする。まさか今の雷でグリード、真っ黒焦げ……!?


『……ジャ、ジャン選手、空からの奇襲に成功! 奥義を決めてグリード選手をワンパンだぁ!』

 実況が再開すると、観客はわーっと湧き上がった。

『こうなるとグリード選手の生死が問われるがどうだ、ちゃんと生きているか~!?』


 審判がグリードのもとに駆け寄り、何かを確認している。

 そして実況の方を向いて頷き、こうジャッジをした。

「グリード選手戦闘不能! 勝者、ジャン・グランホーク!」

『グリード選手なんとか生きていた~! ジャン選手の勝利だ~!』

 会場は大盛り上がりを見せた。


「良かった~、俺殺っちまったと思ったぜ……」

 と、マルクス様。同感です。

「ジャンの奴、おそらくギリギリを狙ったな……自分が殺ってしまって反則負けになっても、後2人が勝てば良いくらいに思ってるぞ」

 と、クロード。なんてこった……。


「がっはっは! 良いぞジャン、良くやった!」

 カーサ国王は大喜びである。


 ジャンは入場口にいたジェイミとレオンとグータッチをして退場していった。

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