第53話 リュカの家族
⸺⸺その晩。
いつものように黒狼のみんなで食後のコーヒータイムが始まる。
「ねぇ、リュカの兄弟全然似てないね。リュカだけ謎にイケメンだよね」
私はそう話を切り出す。
「僕だけ母親が違うんだよ。僕は第二王妃だったメイリー・ラメールの子。他の兄さん、姉さんは第一王妃ルージュ・ラメールの子なんだ」
「第二王妃……“だった”?」
「うん、お母様は僕の卵を生んですぐに死んじゃったんだ」
「そうだったの……って、卵!?」
「あれ、そっか、そりゃさくらは知らないよね。クラニオ族の女性は、卵を生むんだよ。ちなみにジャンのプラム族もね」
リュカがそう説明をすると、ジャンはニッと笑った。
「し、知らなかった……魚と鳥だからか……」
私はあまりの衝撃に呆然とする。
「続きいい?」
「あ、すいません。どうぞ」
「で、僕のお母様は平民だったんだけど、お父様が一目惚れをして第二王妃として迎えて、お母様が亡くなってからもお父様は僕を一番に可愛がってくれた。まぁ、第一王妃様も、兄さんも姉さんも気に入らないよね」
「あー、嫉妬されちゃったのか……」
「そう。で、お父様に内緒でたくさん嫌がらせされた。ご飯に生きたカエル突っ込まれたりとか、そういう感じ」
「うっ、可哀想……。お父様に言わなかったの?」
「言ったらお父様はきっと怒ってくれるよ。でもそうすると、チクられて怒られた腹いせに、前よりもっと酷くなるだけだから。だからお父様にも言えなくて、20歳になっていい加減嫌んなって、去年この国に逃げてきたの」
「この国は王子様の駆け込み寺なんだね……」
ここでクロードが口を挟む。
「一応紹介しておいてもらえるか。レオンたちなら大丈夫だとは思うが、情報は多い方がいいだろう」
「そうだよね。えっと、第一王子アロガン。別名
「なんかヤバい別名ついてるね!?」
私がツッコむ。
「あ、僕が勝手につけた二つ名だから気にしないで。いつも偉そうだから」
「そ、そっか……確かにめっちゃ偉そうなのいたから、あの人かぁってなってる。分かりやすい」
「でしょ? 第二王子
「じゃ、そこ僕担当だね~」
と、ジェイミ。
「第三王子強欲のグリード。大剣を使うよ。さくらのこと抱きたがってて僕をぶっ飛ばした人」
「っしゃぁ、どっちがさくらを抱くに相応しいか分からせてやるぜ」
と、ジャン。そんなの勝手に決められても困るんですが……。
「一応言っておくと、第一王女嫉妬のディアーに第二王女狡猾のドロレス。2人とも魔道士で僕をイジメるために状態異常の裏魔法ばっかり練習してたから、兄さんたちが敵わないと思ったら場外からズルしてくるかも……」
「あー、そういう系もいるんだ……」
私は、あの2人の魚女なら確かにやりそう、と思った。
「そうなれば私が裏で仕留めるか?」
と、クロード。
「まぁ、裏魔法のせいで殺されそう、とかならお願い」
と、ジェイミ。
「承知した」
「きっと順番は、先鋒の1番目が第三王子強欲のグリード、中堅の2番目が第二王子憤怒のラース、それで大将の3番目が第一王子傲慢のアロガン。これで来ると思うよ」
リュカが説明を終える。
「お、んじゃ俺トップバッター、先鋒だな」
「僕は中堅」
「まぁ俺はボコれれば何でもいいからじゃぁ大将で」
大将取り合いになるのかなって思ってたけど、なんかあっさりと順番が決まってしまった。しかも大将が余り物という……。
「みんな、こんなことに巻き込んでごめんね」
と、リュカ。
「そういうの今更だよ。もう僕たち結構色んなことに巻き込まれてるから」
ジェイミはそう言ってクスクスと笑う。それに続いてレオンとジャンもうんうんと頷く。
「ありがとう……」
リュカは切ない表情ではにかんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。