第43話 反省会

 そのデートの練習のあった夜、反省会を兼ねてみんなで酒場へと集まった。


⸺⸺黒豹亭⸺⸺


 マルクス様がくっついてきたおかげで無条件で個室を貸し切らせてもらえ、反省会が始まった。


「集合時間に5分遅れてきたの、あれはわざとだぜ?」

 と、ジャン。

「何、そうなのか!? 一体なぜそんなことを……」

 クロードは信じられないという表情で目をパチクリとさせている。


「クロード、説教するだろうなって思ったからだよ」

 と、ジェイミ。

「時間にルーズなのは良くないことだ。説教して当たり前だろう」


「そうなんだけどよ。初めての人とのデートん時は、絶対に相手を説教すんな。これはデートだけじゃねぇ、もしお前が王族としての公務をこなすようになった時もそうだぞ。それを言われて相手がちょっとでも不快になるような言動は避けたほうがいい」

 と、マルクス様。面白がってた割に、ちゃんとアドバイスしてくれている。


「そうなのか……」

 クロードはシュンとする。


 次にルシオが口を開く。

「さくら、今日一生懸命おめかしして、すごく可愛かったよね~」

「えへへ、ありがとう」

 私は照れてはにかむ。


「クロード、褒めるっていうのはこういう事だよ、分かる?」

 と、リュカ。

「わ、分からなかった……」

 クロードはシュンとする。


「お前、説明長すぎるな」

 と、レオン。

「それは思った……聞いてもないのにめっちゃベラベラと……」

 私はあの説明地獄を思い出しながら言う。

「うっ、理解が深まると思って……」

 クロードはシュンとする。


「ならよ、さくら聞くけどよ、今日の説明の内容覚えてるか?」

 と、ジャン。

「何も覚えてない……」

「何っ!?」

 クロードは愕然とする。


「さくら、クロードが説明してる間、お前が頭ん中で何考えていたか言ってやれ」

 と、レオン。

「足痛い、お腹空いた……」

「す、すまん……今になって考えると、可哀想なことをしたと思っている……足は、大丈夫か?」

「うん、もう大丈夫だよ」


 ここでレオンが少し恥じらいながら口を開く。

「俺も最初はそうだった。一緒に歩いていても、気付いたらさくらはずっと後ろを歩いていたり、気遣えてやれなかったことがたくさんあった」

 そう言えばそうだった。でもそれは、本当に最初の頃だけ。あれがあったから、レオンは私のこと1番に見てくれてるのかな……。


「お前はこいつの魔力ばかりを見て、自分と同等くらいに考えてんのかもしれねぇけど、さくらは、お前が思っているよりもずっと非力だ。お前の想像もできないところでつまずいてる。それを知るためには、自分のスケジュールをこなすよりも、さくらを良く見るしかねぇんだよ。観察はお前の得意分野だろうが」


「そうだな、私は……なんとしても立てた計画をこなすことばかりを考えてしまっていたようだ……」


「それが分かったんなら、反省会ももう十分じゃね?」

 と、ジャン。

「うん、そうだよ。それに、私のためにあんなたくさん色々考えてくれてありがとう。1日じゃ全部は無理だけど、また今度ちょっとずつ連れてってよ」

 私がそう言って笑みを送ると、クロードは「あぁ……」と短く返事をして、顔を赤らめていた。


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