第34話 一件落着ってことで

「……」

 この世の終わりの様な瞬間に、その場の誰もが呆気に取られていた。


 一度ひとたび雷が落ちると辺りは嘘のように明るくなり、再び平穏な空気へと戻った。


「こんなこと、本当にあんだな……」

 と、マルクス様。

「拙者、建物の中を確認してこよう」

「おぅ、頼んだ虎丸」


⸺⸺


 虎丸さんがすぐに戻ってくる。

「誰もいなかった。それに、その場所で散々召喚行為をしていたというのに、その魔力痕まりょくこんすら残っていなかった」


「魔力痕は普通消せねぇからな。その次元の狭間の上司とやらがやったんだな」

 と、レオン。

「あんなに忠告したのに……」

 私がシュンとうつむくと、ジェイミが私の頭をヨシヨシと撫でて励ましてくれた。

「さくらが落ち込むことなんてないよ。悪いのはあいつらなんだから」


 更にレオンが続く。

「あいつらの自業自得だ。ざまぁみろくらいに思っておけばいい」

 最後にマルクス様。

「俺は、あんなやつら対処に困るから、正直上司さんが綺麗さっぱり消し去ってくれてホッとしてる。ま、一件落着ってことで」


「みんな……ありがとう。そうだね、私忠告したもんね。これでもう召喚の犠牲者も出ないし」

 私がそう言って開き直ると、みんなもうんうんと頷いてくれた。



 村に戻ってみんなへ事情を説明し、無事解決したことを喜び合う。

 そして少し休憩をした後、私たちは村の人たちと別れの挨拶をして、王都へと帰還した。


⸺⸺黒狼の牙 アジト⸺⸺


「うお~! 俺もその特別依頼参加したかったぜぇ!」

 ハントから帰ってきたジャンが悔しそうに言う。

「そうだな、私もだ。しかし乱召喚か……魔道士のプライドというものがまるでないな」

 と、クロード。それに対しレオンが「魔道士以前に人間のクズだったぞ」と返す。


「僕はさくらとレオンとジェイミのパーティ構成が気になる……」

 リュカはそう言ってテーブルの上に指で三角形を書いている。

「虎丸さんもいたよ」

 私がそう言うと、彼は「ええー、四角形じゃん……」と言って三角を四角にしていた。


「さくら昨日今日とブラシしてないから、晩ご飯食べたらブラシしようね」

 と、ルシオ。

「あ、ブラシなら村で休憩中にジェイミがしてくれたよ?」

「ふふーん。僕だって猫用ブラシ買っちゃったもんねー」

 ジェイミがドヤ顔をする。

「あー、俺の仕事取るなよぉ」


 1日ぶりに全員揃った黒狼の牙は、今日も賑やかです。

 よし、1つ大きな仕事も終えたし、明日からまた白魔法の訓練頑張るぞー!


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