第35話 新たな問題

 訓練所に通うのもこれで5回目。魔法を使うのに必要な“魔道開放”という工程も無事終了。

 魔道開放とは、体内の魔力を魔弾まだんとして体外に放出することで、これが出来るようになると魔法を使う準備が出来たということになる。


 そのため今日はいよいよ白魔法を実際に発動してみる日。

 楽しみなはずなのに、私は気分が億劫おっくうになっている。


 無理して笑ってみんなをクエストやハントに送り出すと、私は大きなため息をついた。

 そして私自身も出かける準備をして、アジトを出る。すると、レオンがアジトの壁にもたれ掛かって私が出てくるのを待っていた。


「レオン? ハントに出かけたんじゃ……」

「お前、訓練所で何かあったのか?」

「え? 何で?」

「あったんだな?」

 そう問い詰める彼に対し、私は首を横に振る。


「ううん、訓練所では、何もないよ。順調に進んでるし、すごく楽しいよ」

「訓練所では?」

「うん……実は行き帰りに、人につけられてるような気がするの……」

 私は、ここ数日の悩みを正直に彼に打ち明けた。


「つけられてるだと……? ここ周辺には変な気配は感じねぇが……」

 レオンはそう言って周囲を探るような仕草を見せる。

「うん、もう少し進むと、路地裏から出てきて訓練所までずっとついてくるの……」

「お前、何でそれ誰にも言わなかった?」


「勘違いかなって……それで心配かけても悪いし、逆に笑われたりとかしても……」

「笑う訳ねぇだろ。お前がそんな顔してんのに」

「え……」


 キュンってして思わず彼の顔を見上げると、彼はいつものように視線をそらしたりはせず、真っ直ぐに私のことを見つめていた。

 レオン、本気で心配してくれてるんだ。私が落ち込んでたから?

 レオンって、リビングとかにいても素っ気なくて私になんて興味ないのかなって思ってたけど、家の中で1番、私のこと見ててくれたんだ。


 さすがに私も見つめすぎたのか、レオンは顔を赤らめてスッと視線をそらした。

「いいから行くぞ。遅刻すんだろ」

「あっ、そうだった。え? レオン一緒に行ってくれるの?」

 その問に対し、彼はこっちを見ないまま答える。

「当たり前のこと聞くんじゃねぇ。訓練所で何もねぇなら送り迎えだけだ。サッサと行くぞ」

 そう言って彼はスタスタと歩いていってしまった。

「あぁ、レオン待ってよ~!」


 先行っちゃったら送り迎えの意味なくない!?

 そう思いながらも、誰かにつけられてるとか、そんなことはもうどうでも良くなるくらいに私はキュンキュンしながら彼を追いかけた。


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