第33話 裁きの雷

 ウェルマーたちのいる建物まで主要メンバーと走りながら、次元の狭間での出来事を彼らへ伝える。


「逆召喚!? その次元の狭間とかいう所にいるやつは、んなことできんだな……。召喚だけでもすげぇのに……」

 と、マルクス様。

「で、俺らは何で急いで向かわなきゃなんねぇんだ?」

 レオンが不満そうにそう尋ねてくる。


「何でって、その裁きの雷の発動条件が次にその座標で召喚をしたときなんだよ? 逆召喚されたくなかったらやめなさいって言ってあげないと、本当にその地獄みたいなところに飛ばされちゃうよ!?」


「お前、昨日あいつらがお前らのことを散々に言ってたこと忘れた訳じゃねぇだろ?」

「そうだけど、でも……!」

「さくらは優しいから、そうやって考えるだろうね」

 と、ジェイミ。


「一応昨日一緒に次元の狭間に行った人たちも同じ意見みたいだったし……」

 私がなんとかみんなを説得しようと頑張っていると、マルクス様が口を挟んできた。


「さくらみてえによ、召喚されてすぐ捨てられた皆、そんなひどい目にあったのに、結果的にこの国に来れて良かったって、そう言ってくれてんだよな。俺はそれがすんげぇ嬉しかった。だから、俺はお前らの意見を一番に優先するぜ。さ、急いで馬鹿な自殺行為を止めに行こうぜ」


「マルクス様……ありがとうございます!」


「ったく、仕方ねぇな……」

「ホント、しょうがないんだから……」

「レオンもジェイミもありがとう!」


 私たちがその石造りの建物へと到着すると、ウェルマーたちは今まさに本日1回目の召喚をしようというところだった。


「あなたたち、今すぐその召喚をやめて!」

「!? なんだこの女!?」

「猫の耳か……? 新種の種族じゃね?」

「なんだ女、俺の嫁になるならその無礼な言動、許してやってもいいぞ?」

 と、ウェルマー。彼がそう言うと、ジェイミの眼光がキッと鋭くなり、今にもウェルマーに飛びかかりそうになるが、レオンがそれを制止する。


「何すんだよレオン!」

「さくらの話はまだ終わってねぇだろ」

「っ……分かったよ……」


 私も悔しい気持ちをグッと堪え、再び口を開く。

「次にあなたたちが召喚行為をすると、次元の狭間から裁きの雷という天罰が下ります。すると、逆召喚が起こり、あなたたちにとって地獄のような世界へと、逆にあなたたちが召喚されることになります。そんなのは嫌でしょう? だから、今すぐにその召喚を止めて!」

 よし、ちゃんと言えた!


「何言ってんだこいつ?」

「いいから召喚を続けろ」


「!? 本当だよ! 危ないから今すぐやめて!」

「さくら、ダメだ、もう召喚が発動する……! 僕らもここから避難しないとどうなるか分かんないよ!」

 と、ジェイミ。


「さくら、お前はちゃんと慈悲を与えた。もう、十分だ、良くやった」

 レオンはそう言って私を抱きかかえると、ジェイミと共に建物から脱出した。



⸺⸺その瞬間。


 辺りの空が急激に暗くなっていき、空からあの可愛い上司の声が聞こえてくる。

『聖女の慈悲をも踏みにじるとは笑止千万! 地獄へ堕ちろ! 裁きの雷!』


「なっ、なんだ、何が起こっている!? た、助けてくれー!」

「ぎゃぁぁぁぁっ!」


 建物からそう悲鳴が聞こえたかと思うと、今までに見たこともないような大きな雷がゴロゴロドカーンと、その建物へと降り注いだ。

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