第二章 乱召喚と恋する白魔道士

第21話 訓練どころじゃないんですけど

 今日は魔道訓練所に申し込んでから初めて訓練所に行く日。


 魔法の“ま”の字も分からない私のために、プロの魔道士クロードがついてきてくれることになった。



⸺⸺魔道訓練所⸺⸺


「これは……! クロード様っ! ようこそお越し下さいました!」

 訓練所に入るなり受付のお姉さんに手厚い歓迎を受けるクロード氏。


「悪いが今日は指導に来たのではない。ただの付き添いだ」

 彼はそう返す。

「そうでしたか……えっと、そちらのお嬢さんは……」


「あ、今日からお世話になります。サクラ・カヅキです!」

 私はペコッとお辞儀をした。

「まぁ、そう言われて見ればネコ耳……! 本当にヴァーデルンなんですね! お待ちしておりました、こちらへどうぞ」


 お姉さんについていきながらクロードへコソッと耳打ちする。

「クロードここの関係者なの? 最初に言っといてよっ」

「関係者というか、国王陛下に頼まれて何度か指導に来ているだけだ」

「それを関係者って言うんでしょ!?」

「む、そうか。ならば関係者だ」


 って言うか国王陛下に直々に依頼を受けるって……クロードめちゃくちゃすごい魔道士なのかな……。


 訓練室に入ると、優しそうなエルフの男性が出迎えてくれる。

「さくらさん初めまして。僕はアロイス・バルト。ここの先生をしています」

「初めまして、今日からお世話になります!」


「さくら、アロイス先生とお呼びするように」

 と、クロード。何でクロードが!?

「わ、分かった……アロイス先生」


「ははっ、まさか今日来る新人がクロード殿下を連れてくるとは、想定外でしたよ。殿下、何のおもてなしもできず申し訳ございません」

 アロイス先生はそう言って申し訳なさそうに頭をペコペコさせた。


「殿下!? 殿下って何!?」

 私は思わずそう発狂する。

「さくら、殿下というのは、王族に対して使う敬称だ。だがさくらは同じ屋根の下暮らす仲間、敬称はいらないぞ」

 と、クロード。そんなん分かっとるわい!


「クロード……王族なの?」

「む……そう言えば話してなかったか」

「聞いてませんけど!?」

 いきなり始まる身内トークに苦笑いをしながら見守るアロイス先生。


 私はここでクロードが王族としての修行のためにこの王都ライヴィリアへ来たことを聞かされた。


「知らなかった……それでクロード、修行の成果は出てるの?」

「いや、全くだな」

「あはは……」

 苦笑するアロイス先生。ここで私は先生を放ったらかしにしていた事実に気付く。


「すみませんアロイス先生! 魔法の訓練に来たこと忘れてました!」

「大丈夫ですよさくらさん。僕も同居人にいきなり王子だって言われたらそりゃ驚きますから。そもそも僕が殿下と発言をしなければ良かったのですから、どうかお気になさらず」


「いえ、そのおかげで大事なことを知ることができたので……ありがとうございます……」

「ははは……それでは早速始めましょうか」


「はい、お願いします!」


⸺⸺


 いきなりハプニングに見舞われたが、何とかアロイス先生のご指導が始まり、今日のところは魔法杖の説明や魔法の基本的な理解を深めて終わった。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る