第22話 そういえば召喚されたんだった

 私が訓練所に通い始めてから数日たったある日のこと。


 今日は訓練所もお休みだし、にゃんこになってバルコニーでゴロゴロするかな~。

 そう思った私は猫へと変身してバルコニーへ向かう。するとそこでは既に先客があぐらをかいて日向ぼっこをしていた。


「ん、さくらか……」

 レオン氏である。あれ、そう言えばレオン今日お休みなんだっけ。

「んにゃ~」

 私はそう返事をしながら、恐る恐る彼の膝へと乗っかってみる。

 あれ、怒らないみたい……。そのため私はそのまま彼の膝の上でくつろぐことにした。


 彼は怒らないどころか私のもふもふな身体を撫でてくれている。

 あぁ、幸せだなにゃぁ。


「ここ、だったか……?」

 彼はそう言って私のあごを人差し指で引っかくように撫でる。

「ふにゃぁ~……」

 あぁ、そこです。そこ、気持ちいいんですぅ。

 思わずうーっと顎が伸びる。すると、彼は優しくふっと吹き出した。

 え、あなたそんな顔できるんですか? もしかして猫、好きなんですか?


 新たな発見ができて嬉しい。そう思ってると、クエストに出かけたはずのジェイミがドタドタとバルコニーへ駆け込んできた。


「あれ、レオンだ。さくら知らない?」

「さくらに何の用だ」

 彼は振り向かないままそう答える。あれ、私このままここにいて大丈夫かな……。


「何のって、レオンには関係ないでしょ……って、その魔力、そこにいるじゃん!」

 ジェイミはそう言ってぷんすかしながらレオンの隣へ座った。


「にゃぁ~」

 とりあえずジェイミの方を向いて返事をする私。

「さくら、おいで」

 ジェイミはそう言って膝を手でトントンしている。


 え、私どうするべき?

 助けを求めるようにレオンを見上げると、彼はすぐにサッと視線をそらした。

 うわぁ、何それ私のこと試してるの!?


「さくら、ほら、こっち」

 ジェイミは再度要求してくる。


 ど、どうしよう……。何でジェイミは無理矢理抱き上げないで私に自主的に来させようとしてくるの……? そんなの困るだけじゃん。


 決められない私は、レオンの膝から降りると、どちらの膝でもないバルコニーに寝転がってゴロゴロして誤魔化した。


「そうきたか~」

 と、ジェイミ。鼻で笑うレオン。


「つーかお前クエストは? サボりか?」

「そうそう、その事でさくらに話があってさ! さくらってロカの森で召喚された?」


 召喚? 何それ……。

 はっ、そうだ私……!

 ここで私は人の姿に変身する。


「そういえば召喚されたんだった!」

 この毎日が幸せ過ぎてそんなことどうでもよくなってたよ。


「あはは、何それ、忘れてたの?」

「うん……」

 ジェイミの問いに対し私がそう返すと、レオンが鼻で笑ってこう言った。

「別に覚えてなきゃなんねぇことでもねぇだろ」

「いや、まぁそうなんだけどさ……」

 少し不満そうな顔をするジェイミ。


「えっと、どこの森かは分かんないけど、森で召喚されてすぐポイってされて、その10分後くらいにレオンに拾われたよ?」

 私は当時の記憶を遡ってそう答えた。

「なら、ロカの森だろうな。俺はそこで拾った」

 と、レオン。


「じゃぁ、さくらを召喚した集団の仕業かも。ロカの森の近くにある“ラナンの村”ってところに、変な集団にいきなり呼び出されて追い出されたから助けてくれって人が集まってるから、何とかしてくれってクエストが出てた。村長さんからの特別依頼」


「マジか……」

 苦い顔をするレオン。

「私みたいな人がいっぱいいるの!?」

 それは……大変な事態では。


「さくらを召喚した集団なら僕受けようかなって思うんだけど……レオンどうする? パーティ組む?」

「まぁ、そうだな。俺とジェイミとさくらでパーティ組んで、そのクエスト受注してこい。俺はさくらを連れてその間に城に行ってくる」

「あぁ、そうだね、それが良いかも。了解了解!」

 ジェイミは立ち上がるとすぐに1階へと降りていった。


「そういう事だから、とりあえず城に行くぞ」

「何で城!?」

「文句は聞かねぇ」

「えーやだ、文句言わせて。ちゃんと説明して」

「うっせぇな壁ドンされてぇか」

「され……たい……」

 はっ、つい本音が……!


 私のその返事は想定外だったのか、レオンの顔がみるみるうちに赤くなる。

「そっ……そこは否定しろよ! クソッ、相変わらず調子狂うんだよお前は……! サッサと来ねぇと置いてくからな」

「うわーん、レオン待ってよ~!」


 こうして私は何がなんだか分からないうちにレオンと2人でお城に行くことになった。

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