第20話 黒狼の紅一点
私が
毎日がドキドキわくわくキュンキュンして、あっという間に過ぎていく。
毎日イケメンに囲まれて少しは耐性もついたかなって思ったけど、やっぱりまだたまに沸騰して気絶してしまっていた。
私の仕事はアジトの家事に、クラン支部とのやり取り。まぁつまり雑務に事務……総務って感じだ。
仕事はすぐに慣れてきて、この前初めてお給料ももらい、ジェイミと買い物に行った。
実はその時に『魔道訓練所』という建物の前を通り、ちょっと気になっている。
と言うのも、ハントに出かけたイケメン君たちがたまに傷だらけで帰ってくるので、それが回復の魔法でポッと治せたらなぁと最近思っている。
そういう時はみんな回復薬を飲んでいるんだけど、魔法で治せてあげたら……なんか良いじゃない?
ちなみにクロードはすご腕の魔道士だけど、“黒魔道士”というタイプの魔道士なので回復はできないとのことだった。
そんなすご腕にクロードが私に魔法をかけたときに気絶したけど、あれは私の魔力がクロードを上回っていて、それでも無理にかけようとしたから気絶したらしい。
そんなことを言われたら余計に習ってみたくなる。
それに魔法なんかが本当に使えたら、それこそ異世界ライフ~って感じだ。
とにかく動機がゆるすぎるので誰にも言えずじまいだったけど、お給料も入って訓練料も払えそうだし、ついにみんなに言ってみることにした。
元OL、一世一代の大告白である。
⸺⸺
夕食後、みんなでリビングでまったりしているとき。
私はお皿の片付けを終えると、ソファのレオンの隣が空いていたのでそこにちょこんと腰掛ける。
「あの……」
私がそう呟くと、みんなは一斉にこっちを見た。その集まる視線にモジモジしてしまう私。
「さくら、どうした?」
と、ジェイミ。
「なんかモジってんな。欲求不満か?」
ジャンは相変わらずデリカシーがない。
「あの……私、“白魔道士”の訓練を受けたいの!」
ついに、言ってしまった。すぐダメって言われたらどうしよう。
そんな心配はすぐにかき消される。
「おぉ、良いじゃねぇか!」
と、ジャン。
「僕、回復薬あんま好きじゃないから助かるかも」
今度はリュカだ。どんな味なんだろう……。
「さくらはきっと偉大な魔道士になるぞ。私には分かる」
クロード。彼にそう言ってもらえるとやる気が出てくる、
「さくらの白魔法楽しみにしてるね」
と、ルシオ。
「大丈夫? 覚えるの大変だと思うけど……」
ジェイミはいつでも心配をしてくれる。
「大丈夫、みんなにはすごいお世話になってるし、私も頑張りたいの」
私がそう返事をすると、すぐ隣からレオンの声が聞こえてきた。
「やりたいことがあんなら、もっと気軽に話せばいい。別に誰も反対なんてしねぇから」
「レオン……うん、ありがとう」
私がはにかむと、彼はスッと視線をそらした。
彼は恥ずかしくなると視線をそらす癖がある。私は、この瞬間が結構好きだったりする。だって、意識してくれてるってことだもん……。
そんな私の一世一代の決意の裏側で、ある事態が同時進行で進んでいくこととなる。
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