第15話 小悪魔わんこ

「さくら、おかえり! 登録できた?」

 帰ってくるなりジェイミに迎えられる。


「ただいま。バッチリ登録できたよ!」


「そっか、良かった。じゃぁ早速買い物行こっか」

「うん」


「じゃぁ俺はクエスト行くから」

「あ、うん、レオンありがとね~!」

「……ん」


 私はレオンの背中に手を振る。そしてジェイミと共に再度王都へと飛び出した。



⸺⸺王都ライヴィリア⸺⸺


「さくら、レオンに何かされなかった?」

 と、ジェイミ。朝のこと心配してるのかな……。


「ううん、何もされてないし、朝のことも謝ってくれたよ?」

「あ、謝った!? レオンが!?」

 ジェイミは目をぱちくりとさせる。


「え、うん……。悪かったって言ってたよ……?」


「うわぁ~、なんかやだぁ……」

 ジェイミは明らかに落ち込んでいる。


「やだってなんだ……」


 私が不思議がっていると、ジェイミは私の両肩をガッと掴んでこう言った。


「さくら、なんか今日みたいに急に壁ドンされたりしたら、絶対僕に言うんだよ? 僕レオンに怒ってあげるから」


 ジェイミ、そんなことより……。


「ち、近い……また倒れちゃう……」

 私はだんだんと頭が沸騰してくるのを感じた。


「あっ、ごめん! これじゃレオンの壁ドンと一緒だ……」

 ジェイミはそう言って手をパッと離す。


「あはは……。ごめんね私、そういう耐性なくて……」

「耐性がないって……どういうこと? 怖いの?」


 その問に対し私は首を横に振る。


「ううん……その、恥ずかしいというか……」


 私がそう言ってモジモジしていると、ジェイミはふっと吹き出した。


「何それ。可愛いっ……!」


「ふぇっ!? か、かかかわいくなんて……!」

 私は再び沸騰してくる。


「あはは、照れてる~。でもそんなんじゃこの先大変だよ? 僕が特訓してあげよっか?」


「と、ととと特訓……!?」


「試しに手、繋いでみる?」

 ジェイミはそう言って手を差し出してくる。


「ひぃぃっ! それは……無理……」

「わぁぁ!? さくらっ!」


 私は気絶した。



⸺⸺



 それから路地裏で意識を取り戻すと、ジェイミにめちゃくちゃ謝られた。


 それにしても、ジェイミはただただ優しいのかなって思ったら、意外に意地悪な一面があった……。


 犬耳とふさふさの尻尾もついてるし、二つ名をつけるなら“小悪魔わんこ”って感じだ。



 ジェイミはその後一切私をからかったりすることなく、2人で家具やら必要なものを一通り揃えていった。



 私の部屋は入り口の戸に“さくらのお部屋”っていうプレートがつけられて、中は若い女子丸出しのきゃぴきゃぴなレイアウトになってしまい、心が追いつくまではなんだか落ち着かなさそうだった。


 そして家のあちこちの戸に猫用の入り口も取り付けられて、部屋のレイアウトにさえなれれば人間でも猫でも快適な暮らしができそうだった。

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