第10話 初めて自分の姿を見て

⸺⸺黒狼こくろうきば アジト⸺⸺


「ただいまー!」

 ジェイミは私を抱いたまま元気よくアジトへと入った。


 アジトへ戻るとクロードも意識を取り戻したようでリビングでコーヒーを飲んでいた。

 良かった、倒れたときは心配したけど……。


「おかえりー」

 とみんなが返事をしてくれる。


 この家に帰ったらイケメンが揃って出迎えてくれる感じ……たまりませんな。


「魔封印の効果はまだ切れてないみたいだな」


 クロードは私を覗き込むと、そう言って私のおでこに人差し指を当てて、何か魔法っぽいことをしてくれた。


 ピンっとおでこが光った瞬間、私の中で結ばれたものがパサッとほどけていく感覚があった。


 魔封印を解除してくれたんだ。



 人間になりたい!



「うわぁ、だからびっくりするから急に人にならないでって!」


 しまった……。またジェイミに抱かれたまま人の姿になってしまった私は、またもや彼にお姫様だっこされる羽目になった。


「ごめんなさい……降ります……」

 私はシュンと反省しながらジェイミの腕から降りる。


「あ、いや、急にじゃなかったらいいんだけど……」

 ジェイミは文句言ったくせになぜか名残惜しそうにしていた。


「あの、たくさん買ってくれてありがとうございます! 私、早速着替えたいんだけど、どこかそういう場所は……」

 私はみんなへ深く感謝のお辞儀をすると、キョロキョロと辺りを見渡した。


 そんな私へルシオが口を開く。

「1部屋だけ物置になってた部屋があったんだけど、さっきみんなが買い物行ってる間に掃除しておいたから、そこ使ってよ。おいで、こっちだよ」


 なんと神対応でしょう……。


「ありがとう!」


 私はみんなへ一礼すると、ルシオについて廊下から2階へ上がった。


「わぁ……部屋がたくさん……」


「さくらの部屋はここね」

 ルシオはそう言って突き当りの奥の部屋の戸を開けた。


「おぉ……何もない……」


 ガランとした6畳くらいのお部屋。


「あはは、今まで倉庫として使ってたから、家具はこれから揃えよう。ベッドもないから、今日は俺のマットレス持ってきたからそれで我慢して」


「そ、そんな部屋がもらえるだけでありがたいのに……。ルシオは今日どこで寝るの?」


「別に俺はどこでだって寝れるよ。さぁ、着替えるんでしょ? この後みんなで酒場に行くから、着替えたらまた1階おいでね」


 ルシオはそう言って1階へと降りていった。



 うわぁなんか申し訳ないなぁ……。

 でもこの後酒場行くって言ってたし、急がないとだよね……。


 私はふと、大きな姿見があることに気付く。これもルシオが貸してくれてるのかな?


 そして何気なくその姿見を覗き込むと……。



 そこにはめちゃくちゃ可愛い美少女が立っていた。


 顔だけはどうしても鏡じゃないと見れなかったから今初めて見れたけど、長いまつげにくりんくりんのくっきり二重。

 瞳は赤くてちょっとミステリアス。


 シュッとした顎の輪郭に、ぷるんとした唇。全然唇カサついてないし、顔もめっちゃ小顔。


 見た目はまだ幼さがちょっとあるかんじで、10代後半って感じだ。


「か……可愛すぎ……」


 思わず自分に見とれる私。


 それにジェイミに借りてるカーディガンを1枚着ている私は、男性の服から細くて白い足が出てきていて、何だか服がびしょ濡れになって彼氏の服を借りている女子高生のようだ。


 どの角度から見ても……エロい……。


 私ってこの状態であんなイケメンたちに囲まれてたの……?


 第3者目線で想像してしまう私。


 無理、恥ずかしすぎる……。



「いやぁぁぁぁぁぁ~!」


 私はうずくまってもだえていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る