第13話

青葉君が座ると、その隣の青年が席を立つ。

見るからにスポーツ万能そうな肌色をしている。

「井田しおうといいます。24歳です」

はっきりと話す割には、自分の情報を流していない。

佐々木はニヤニヤしながら、

「井田くんは消防士のなかでも期待に新人です」

個人情報は秒でばらされた。

井田は一瞬佐々木を睨んだがすぐに座った。

勢いで立とうとしたら、またも佐々木の茶々が入る。

「次がトリですよー!」

若者たちの視線が一気にこっちに向いた。こちらとしては、何故自分がトリなのか謎すぎるし、注目なんてされたくなかったが、そこは社会人の余裕を見せねばならない。

「桃谷駆です。30歳です。しがない中小企業でサラリーマンしています。

皆さんのように秀でた特技はありませんが、よろしくお願いします」

若者たちの視線が痛い。

「桃谷さんは少しおにいさんですが、ボジショニングとしては引率かなー?」

佐々木の説明も他の人たちに比べると弱すぎる。

確かにこちらにも特に語れるものがないので、なんとも言えないが。しかし、今日日の若者はこちらの雰囲気を読むのがうまいようで、先程のささるような視線とはかわって、巻き込まれて可哀想という空気感にかわっていた。

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