第7話

「つまり君は人畜無害の調整役として選ばれたのだよ」

いちいち彼のいい声は鼻につく。悪気がないのがなおのこと。

「まぁ、ここから先は、喫茶店でも行こうか」

何故か胡散臭い男に肩を抱かれ、本社の再奥の部屋から退出させられた。

「失礼しました」

と半ば連れ去られながら言うと、もう一人の胡散臭い男、須藤がいい笑顔をはりつけながら、

「今日はこのまま帰っていいからねー。決まったら報告だけあげて」

と言ってきた。

社長の反応を見るにもう答えは一つしかないのだが。



少し値段の高めの喫茶店に導かれ、メニューをすすめられる。

とりあえず紅茶を頼んで、待っていると、

彼は名刺を出してきた。名刺には国家公務員という名前の横に選抜戦術部隊課課長 佐々木 新と書かれている。

「私は選抜戦術部隊を管轄している課長の

佐々木 新という。そして、彼女は課長補佐の加藤 史佳という。以後お見知りおきを」

先ほどまでとは打ってかわって、なかなかの好印象な挨拶だ。よく考えてみたら

呆気にとられすぎて、彼らの名前すら知らなかった。

「とりあえずこちらの契約書にサインしていただく前に、保証などの説明をさせていただきます」

加藤は小冊子をわたしてくる。

小冊子は経費削減なのか、学生の頃の旅のしおりみたいだった。

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