第7話 政治

「──つまり誤射の相手がフレクレスの親類の者だったと」


ミナ嬢を取り巻く環境が政治が働いているらしい。


「正確には分家の方でしたが、エルサさんとも仲の良い人でした」


その瞬間を思い出したのかミナ嬢の顔色は悪い。


「くだらん、つまりは派閥の面子の話か」


胸糞悪い話だ。そいつらの言い分はオーライムの思想とかけ離れている。なぜ独立国家を維持したのか。なぜ階級を問わない規則を作ったのか。そんなことにも気が付かないほどにマナに愛された人間は政治に忙しいようだ。そういうことは学院を出てから思う存分やってくれと思う。


「ヴェンはこういう話嫌いだもんねー。僕もあんまり好きじゃないかな。トップのフラクレス嬢は派閥をまとめられてないみたいだし」


難しいよね、とアルフレッド。派閥トップの苦労もあるのだろうが、俺に同情する気持ちは湧かない。


「フラクレス嬢は実力もあるんだよ。序列も二位につけてるし」


「おまえよりも上か……」


意外だった。正直俺にはこの男が負ける姿があまり想像できない。


「五位の僕とは天と地ほども差があるよ!」


「圏外の私とは月と地中です……」


「そ、そうか……」


ミナ嬢はそのまま地中に埋まっていきそうだった。しかし、


「ミナ嬢が上位10名に入ってないとは意外だな」


「一年時は入学試験、二年時は進級試験の結果で決まるからねー。今の一位は欠番。ミナ嬢は圏外、ということは?」


「誤射のペナルティか」


「多分ね」


序列一位最有力がミナ嬢ということか。凄まじいな。前にアルフレッドが「いくらでもいる」等と宣ったが、想像以上にミナ嬢は才能豊かな魔導師だった。


「序列のことはわかりませんが、私がエルサさんたちに説明出来れば良かったんです……」


「そんなことはない。話せない事情など誰にでもある。やつらは鏡に写った姿が立派かどうかが気になるだけさ」


「僕にとってはミナ嬢が笑顔でいることが一番重要だよ!」


「ありがとうヴェン君!」


「あれ? 僕今良いこと言ったよね?」


「悪魔の甘い言葉は裏があるのが相場だ」


「はい先生! このパーティーにはイジメがあります!」


挙手するアルフレッド、手をあげるのが好きなやつだ。その姿に、


「ぷっ──!」


ミナ嬢が噴き出した。よしよし、急造のパーティーだが、何だかなってきたじゃないか。


「いやヴェン君も。これで笑ってたらミナ嬢の教育に良くないと思うよ」


ぼやくアルフレッドを残して、俺たちはようやく訓練場へ足を踏み入れた。

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