第2話 酒場にて

ー酒場にてー

「で?誰なんですかあなたは」俺は勇者(笑)に問いかける。

「私は勇者だ、それ以上でもそれ以下でもない」

勇者()は芋料理を頬張りながら答える。


(芋料理13個目だぞ・・・・・・まあいいや)

「そうじゃなくて!名前とかどこから来たのかとか」

「あーなるほど!確かに、自己紹介がまだだったな!」


「私は勇者のロッドだ、魔王を倒すため旅をしている。出身はイナカノ・マーチという田舎町だ」

「へーイナカノ・マーチ・・・・・・聞いた事ないなあ」

「田舎だと言ったろう?」


「それに本当に勇者なんですか?」俺は疑問を投げかける。

「なに?」

「勇者って言えば、大昔に魔王を討伐寸前まで追い詰めた伝説の戦士でしょ?とっくの昔に死んでない?」


「ふっふっふ分かっていないな君は」

「?」

ロッドは得意げに語る。


「勇気があれば誰でも勇者になれる、私はその勇気を魔王討伐に向けているだけだ」

(つまり勇者じゃないんじゃん)

俺は心の中で突っ込んだ。


「ところで、君の名前はなんて言うんだ?」

「ああごめんごめん、自己紹介がまだでしたね」

俺は自己紹介を始める。


「俺はレンブ、ただの平凡なランク5の冒険者だよ」

「なるほど、所でランク5とは何の事だ?」

俺はロッドの発言に驚愕する。


「・・・・・・冒険者のランクシステムも知らないんですか?」

「いや?」

ブタイ王国の国民ならば誰もが知っている常識、冒険者のランクシステムを俺はロッドに説明した。


「ランクシステムって言うのは、冒険者を実績や実力で5段階にランク分けしたものだよ」

「なるほど~」

「ロッドさんの町には冒険者っていなかったの?」


「いや?害獣退治のような危険な仕事からおつかいのような雑務まで何でもこなすなんでも屋とは聞いている」


(よかった流石に冒険者については最低限の知識があった)

俺は心の中で安堵する。


「そうだ!」

「?」

ロッドは突然何かを思い出した様に聞いてくる。


「聖剣広場というのがどこにあるか知っているか?」

「あー知ってますよ、なんなら近いし案内しましょうか?」


「本当か!?かなり助かる!」

勇者は嬉しそうに俺に感謝を伝える。


「それじゃあお会計しましょうか、すみませーん!」

「はーい!」

俺が呼ぶと、一人の若い、見た感じ18歳ぐらいの女性店員が駆け寄ってくる。


「お会計したいんですけど・・・・・・」

「分かりました、それではお会計3600ユンになります」


俺は財布を取り出し、3600ユンを支払った。

「またのお越しをー」


俺とロッドはその店員の声を背に酒場を出た


「ところで、レンブくん」

「?どうかしました?」

店を出て少し歩くとロッドが声を掛ける。


「すっごくおならを出したいんだが・・・・・・どうすればいい?」

「はあ!?」


「まずい・・・・・・もう出そう」

「芋料理ばっか食べてるから!ええと、さっきの酒場に戻って・・・・・・」


「もう・・・・・・限界」

するとロッドは全身をリラックスさせ、次の瞬間おならが物凄い勢いでロッドの後方に放出された。


ブッー!!!


というかなり豪快な音が鳴った。


「ふー・・・」

スッキリした顔のロッドをよそに、俺はロッドの背後にいる人物に気付き、ロッドに声を掛けた。


「ロッドさん・・・・・・後ろ・・・・・・」

「ん?後ろ?」


ロッドが後ろを振り返ると、そこには龍の黒い刺青が両腕に入った強面のマッチョなスキンヘッド男がいた。


「・・・・・・なにしてくれとんのや我ぇ!」

刺青男は怒り、ロッドに向かって怒鳴る。


「・・・・・・」

ロッドは黙り込み、かなり困った表情をした。


(俺、今日死ぬかもしれない)

そんな事を思いながら、俺は刺青男に恐怖した。

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