No aim, a long way 02 黒幕と魔獣
貢ぎ物を確認すると野盗は酒盛りを始める。火を焚いて牛を焼き、濁り酒の徳利を回し飲みする。3度目ともなれば明らかに油断しているのが分かる。
ナキビは野盗の頭目、ブンギの横に座らされて酌をしている。それなりに気に入られたようでそこはひと安心した。いずれ慰みものになるにせよ、この場で裸にされ家畜のように首に縄をかけられるようなことはないだろう。器量の悪かった一人目の娘のように。
小便をしにブンギが座を離れる。それを潮時とみてナキビも「体を清めてきます」と古堂の裏に向かう。そこに田畑に使う溜め井戸があった。
見張りと称して若い男が後をついてくる。魂胆は分かっているとナキビが睨むと、男は足を止めてニヤニヤと嗤う。しかしその口を後ろから塞がれ、アタラギに喉を裂かれて男は死んだ。
「どこかに隠れていろ。すぐに片を付ける」
ナキビに言い置いてアタラギが走り出す。車座のほうからは既に争う荒声が上り始めていた。
荒くれの野盗も酔っていては碌に動けない。まして【剣持ち】の冒険者が相手では勝負にならない。腹を裂かれた者はその場に膝をつき、森に逃げようとしても背中を矢や手槍の的にされる。
「頭目が見当たらない! どうするアタラギ」
「チッ! いずれブンギの首を獲らないと討伐の意味がない。ここで夜を明かして山狩りか」
「その必要はねえ! これを見ろ!」
ナキビの喉に山刀を喉に突きつけたブンギが古堂の横に現れる。
「ナキビ!」
「助けて、死にたくない……死にたくなーい!」
「聞いたかよ? 娘を殺されたくなかったら武器を捨てろ!」
ナキビを人質にブンギがじりじりと横に移動する。しかしそこに冒険者の魔法使いが、二人の頭上から『
「くそっ! てめえよくも」
「形勢逆転だな。首を刎ねられるか火だるまになるか、好きな方を選ばせてやるよ」
「ば、バカヤロー! どっちを選んでも死ぬんじゃねえか!」
叫んで走り出すブンギに魔法使いが腕を伸ばして照準を合わせる。
「火だるまがお望みか。だったら……ぐがっ!」
魔法使いの体が後ろに吹っ飛ぶ。見れば人の頭と同じ大きさの投石がひしゃげた魔法使いのそれと入れ替わっている。
「油断だったな、ブンギ。だから言ったろうが」
「面目ねえ。助かったぜ、旦那」
見ればブンギの隣に軍服を着た隻腕の男が立っている。その後ろにはゆうに3メートルはある猿の魔獣がいた。投石はコイツの仕業だと冒険者の皆が察した。
そしてアタラギはこの軍服の男を知っていた。
「ヘイロウ……兄さん、なのか? 生きていたのか」
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