No chaser 07 それは自分で言うがよかろうなのだ!
「君に出会えて良かった。セイ、これからもずっと一緒だよ?」
そう言うリンドの声は少し震えていた。泣いているのか笑っているのか……それを確認したくても後ろから抱きしめられたままの今のワタシには無理な注文だ。
リンドがどうして下洛貴族となって辺境ここに来たのか、彼はようやくワタシに話す気になったようだ。
この【
しかし華々しい舞台の裏で、央都は貴族同士が日夜権力闘争を繰り広げ、権謀術数が渦を巻く魔都でもある。
「まあ仮にそうでなかったとしても、僕は
ワタシからすれば、それがそもそも間違っているのだがな。ハズレだとすればこの
リンドは過去の愚物どもに歪まされた
「君に出会えて良かった。セイ、これからもずっと一緒だよ?」
自信を持て。今のリンドはもう奪われ続けたひ弱な出来損ないではない。籠に捕らわれたカナリヤではない。自分の翼で空を飛び、自分の爪で狩りをする鷹になったのだ。
それにワタシにもやりたいことができたからな。復讐するなら手を貸すのもやぶさかではない。だらだら生きてしわくちゃになるより、お高くとまった貴族連中の横っ面を命がけで張り飛ばすほうがずっと痛快でましな生き方だ。 【漂流の民】であるワタシがここでリンドに出会ったのも、ある意味必然のことなのかもしれん。
……あーしかしこの
ワタシとリンドの目の前には家が建つほどの広さの真っさらな荒れ野が出来ている。原因はリンドの魔法の
「だからその……セイも僕と一緒に南郷に謝ってくれるかい?」
なっ、それは自分で言うがよかろうなのだ! ワタシを巻き込むんじゃない!
初めてだから加減が分からなかった? うんと言ってくれるまで離さない?
何を言って……こ、こらぁ! こんな事に付与術の身体強化を使うんじゃない! 離れて……ああもぅ! 口で「ぎゅー」とか言いながら腕に力を込めるなァァァ!
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