Count 33 円東寺加護女と巫子芝安里
「あ〜いたいたー。みんな無事ぃ~? よかったよかったー」
いつもの眠そうな眼にテンションの低いダル気な口調。大仕事を終えてきたらしい円東寺加護女は、徹夜明けの社畜のようにへらっと笑いながら魔方陣を出てこちらに歩いてくる。オレたちもガゼボを出て彼女に近づいていく。
ストレートな黒髪に月下美人をあしらった……シノワズリのロングドレス? こっちは月霊姫の格好でアピールですかそうですか。しかし並ぶと色違いのゲームキャラみたいに見えるな。
だけどちょっと待ってほしい。無事だとかよかったとか母さんがそれを言うのはおかしいだろ? だって天竜海竜を操ってた黒幕だよ? ……って、何で話を無視してオレの頭をわしゃわしゃしてんの!
「おー、要くん元気だった~? あれ、髪の毛脱色したぁ?」
してねーよ! むしろ黒く染めたいくらいだよ! そういうイジリはいらないからちゃんとオレの話を聞け!
「どーどーどー、嬉しいのは分かるけど~そんなに焦らないでー」
だーかーらーっ! 人を嬉れションする犬みたいに言うなっての! そんなやりとりをタツコさんと月霊姫は生暖かい目で見ている。
「相変わらずの傍若無人っぷりよねぇ、加護女ちゃんは」
「ええ、私は諦めました。これはもうこれでしょうがないのだと」
イヤイヤイヤ何とかしましょうよ! まだ間に合うって! いくら母さんの年が……うおっ!
「要く~ん、それは言わない約束でしょぉ?」
抜刀こそしていないが、オレの肩に母さんの愛刀・五月雨虎徹が鞘に入ったまま乗せられている。いつの間に? 全然気づかなかったぞ。本当にこれでアラフ……いえ、何でもないです。
「はいはい、話が進まないからいい加減にして頂戴! ……それで加護女ちゃん、『計画』は結局どうなったの? 首尾は?」
「それはもーバッチリ~。【琿虹】のジジイどもは全員投獄! 魔法院は封鎖して即解体! 根回ししててホントよかったー。あ~でも今後の
ギルド? こっそり裏でそんなものまで作ってたのか?
「乗っ取ると決めた以上は~そこまでやらないと意味が無いでしょぉ? 受け皿は必要だしー。これからはブラックな秘密組織じゃなく、世界中と堂々と取引してお金を稼げるホワイト企業を目指すわよ~。【祐久戸】は
流石は【ウロボロスの烈女】の面目躍如ってとこだな。多少趣味に走ってるけど。
「あ、あのッ!」
ここでようやく巫子芝が母さんにおずおずと話しかけてくる。ダイジョウブコワクナイヨー。
「あなたが安里ちゃんね~?
「え? それはどういう……わっ!」
母さんが巫子芝をいきなりハグする。あまりのことにされるがままの巫子芝。そりゃあ気に入るだろうよ。母さんも元祖【三なし】だからな。
円東寺加護女の
「ええっ、と……こここれどうしたらいいのかな? え円東寺クン!」
母さん、頬ずりはやめて差し上げて。ほら、巫子芝固まっちまってるだろ!
「本当、そういうところもカワイイわー。もうあなたたち明日にでも結婚しちゃったらぁ? ワタシが許す」
なっ、突然何言い出すんだ! それにそういうのはまだ早いって。オレたちまだ高校生なんだぞ。
「あら~早いに越したことはないわよぉ? リンドなんかこじらせた反動で性欲持て余してたからー、そうなったら大変だと思って~」
おい! それはここで聞かせる話じゃないだろ! これ以上巫子芝をドン引きさせてどうすんだよ!
「え、円東寺クンさえよければ、ボクはその……い、いいよ?」
いやいや落ち着け巫子芝落ち着くんだ! ん? 落ち着くのはオレのほうか? そ、そうだ。こういうときは素数を数えるんだ。1……って、最初から間違ってるじゃねーかァァァ!
「え~でも、二人とも
ちょっ、母さん! そのことはまだ巫子芝には……ん? それを聞いて巫子芝が首だけぐるんとこっちを向いた! そしてリングとオレの顔を交互に見ながらギクシャク近づいてくる。や、やばいんじゃないかこれ?
「えええ円東寺クン! これってその……やっぱりそうなんじゃない! ホントこういうの、どうしたらいいのか……も~バカっ!」
だからわざと言わなかったんだよ! それはそういう名前なだけで、それ以上の意味は……って、あー、もうどうせ聞いてないな、これ……。
本当はもっとカッコよくちゃんとしたかったんだぜ、巫子芝。だけど結局オレたちはこういうやり方しかできないんだろうな……アクセルもブレーキも両足ベタ踏みで大人の階段を
……でもな、巫子芝。オレの胸にトップロープからブランチャー決める勢いで飛びこんでくるのは違うだろ! 毎回それじゃ体がもたねーんだってばよ!
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