Count 29 SUNRISE
「オジサン、最後に謝ってくれたよ。うん……それにボクのコト、お嬢さんって……円東寺クンのこと、よろしく頼むって……」
オレを押し倒したまま、巫子芝はオヤジの最期をオレに語った。そうか、最期にようやくクソオヤジから開放されたんだな、
「それで円東寺クン、ママさんには会えたの?」
いや、まだここには来てない。そう言うと巫子芝が、がばっと身を起こす。
「えっ、管理者にはなれなかったの? でも飛んで来たんでしょ? じゃあ魔法も使えてるんだよね?」
ああ大丈夫、ちゃんと管理者にはなれたよ。麒麟人が死んだときの権限移譲先が改竄されてオレになっていたからな。最初から円東寺加護女の掌の上だったのさ……。
オレは麒麟人が死ぬという状況があり得ないと思って最初からこの選択肢を除外していた。何故なら麒麟人の体内には魔心回路である【羅縄】が埋め込まれているからだ。
もともと
【羅縄】により麒麟人は超回復
【羅縄】は手術で取り出して解除することもできない。失敗すれば麒麟人が人間爆弾になるだけでなく【きみなぐ!】も同時に吹っ飛ぶ仕掛けになっている。麒麟人の【羅縄】は魔法院の
しかし管理者書き換えプログラムを実行しているときにオレは気付いた。超回復は回数制限が設定されていて、麒麟人が死んだときに爆発するのは【きみなぐ!】ではなく央都の魔法院の中枢コンピュータになっていることに! これは円東寺加護女による【琿虹】へのクーデターだ! 麒麟人の死はその狼煙なのだと……。
本気なのかよ、母さん。何やってくれちゃってんだよォォ! オレのデスマーチ人生はまだまだ絶賛継続中なのかよ!
「ようやく来たわね。いつまでもいちゃついてないで早く交代して頂戴!」
駆けつけたオレたちを見てタツコさんがニヤッと笑う。鼻血が出てるその笑顔はちょっと怖い。
タツコさんは前蹴りで海竜鬼と距離をとって、その場に座り込んだ。
「あーしんどかった! あら、お色直し? じゃあ無事に管理者になれたのね」
今のオレと巫子芝はユビキタスとアンリミテッドを元にした服装に戻っている。ただし巫子芝にはスパッツをはいている。そこは当然だろ!
それに巫子芝にも七つ道具を渡した。これでいつでも変身して衣装チェンジが可能だ。
話をするオレたちを前にして、海竜鬼も手を止めている。
「えっ、どういうコト?」
「なんか様子が変わったのよ。
それだけじゃなく
だったらとっとと終わらせよう。
「あ~、円東寺クンがまた【魔王】の顔になってるぅ!」
「何よ、余裕ぶっちゃって。相手は海竜鬼なのよ? どんな作戦なの?」
そうですね、まあ『高度な科学力はいわば小手先のテクに頼ったポップロック、 野蛮人のタテノリには所詮かなわんでしょう』作戦とでも。マンガ好きの巫子芝でも知らないか? タツコさんは笑ってるけど。
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