Count 28 移民の歌(巫子芝安里)
「ぐっ、が、あがっ! 止めろこのポンコツが!」
ボクが声のしたほうを見ると、オジサンが天竜鬼に首を絞められていた。
えっ? 何で天竜鬼が復活してるの?
それを見てボクは思わず走り出す。後ろから「安里ちゃん!」と、タツコさんが叫ぶけど、ごめんタツコさん! でもやっぱりほっとけないよ!
ホント自分でもイヤになる。だけど【三なし】は一生治らないみたい。
ボクを追おうとする海竜鬼のあいだにタツコさんが割って入る。
「しょうがないわね。でも長くはもたせられないわよ!」
ボクが向かってる間も、オジサンは天竜鬼の腹を蹴ったりして抵抗してる。だけど全然効いてない。ついにはでっかい銃を取り出して、天竜鬼の胸に続けて撃ち込んだ。銃声が6発。これは天竜鬼もさすがに効いたらしく、おじさんから手を離して後ろに倒れ込む。そしてそのまま動かない。
倒した? 魔法じゃない直接の打撃だからってコト? オジサン! ってボクが叫ぶと、「やってやったぜ」って顔で満足そうにこっちを見る。だけど次の瞬間、オジサンは血を吐いてその場にくずれ落ちた!
近づいて抱き起こしておじさんを仰向けにする。見ると胸や腹にいくつか銃創がある。跳ね返った弾丸でできた傷だ。そこから流れ出す血が全然止まらない。
「なんだ小娘……しくじった吾輩を笑いにきたのか?」
オジサンはニヤリと嗤って憎まれ口をたたくけど……もう虫の息だ。
「ん? 何故泣く必要がある? 吾輩はお前の敵なのだぞ」
そ、そんなコトない! それにオジサン、まだ円東寺クンに謝ってないじゃない!
「何を……言っている?」
素直じゃないんだから! ホントは円東寺クンに謝りたくて来たんじゃないの? オジサンから返事はない。だけどそれが答えだって分かる。
ボクはオジサンの手を握る。握り返す力は弱い。
……ボクじゃオジサンを助けてあげられないけど、最後に話を聞くくらいならできるよ。戦場にいた時は、そうやってみんなを送ってあげたから。
直接言うのが恥ずかしいならボクが聞くよ。だから謝ってよ。二人が仲直りできないまま死ぬなんて、そんなのボク、絶対イヤだよ!
オジサンは静かに目を閉じて自嘲気味にふっ、と笑った。
「吾輩は好き勝手に生きた。それしか知らなかったからな。……だがもう
『ああ、分かっているよ……そうでしか守れなかったものがあることもね』
「ふん、今更お為ごかしか……最期はいっそお前に……」
『もういいんだよ……さあ、一緒に行こう……』
オジサンの体が淡い光に包まれる。え? これってゲームの演出……じゃないよね?
「悪かったな、小娘。あとのことは好きにしろ。
『済まなかったね、
光が四散すると、オジサンの体はそこにはもうなかった。銃とブレスレットがそこに残っているだけで。
「本当に死んじまったのか? 未だに信じられないんだが」
呆然と座り込むボクの後ろから声がする。
えっ? そ、その声は! ボクは思わず振り返る。
「ああ、済まなかったな巫子芝。ようやくオレも戦線復帰だ」
え、円東寺クン? ……遅い、遅すぎるよ!
「ちょ、おい! なんつー勢いで、巫子芝! ……あーもう、しょーがねーなー。鼻水つけんなよ?」
ボクは思わず円東寺クンの胸に飛び込んでしまった。勢い余ってそのまま押し倒してしまったけど許してね? ほ、ほらずっと補給不足だったし! す~は~
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