冒険者カレン
12文字目 彼女は今、世界の中心で
「あれっ?もしかして理解ってない??」
ハーシバル歴、9381年。
悪意が世に蔓延っている瘴気に満ちたような世界。
晴れ晴れとした青空こそ天に満ち広がってはいるが、いつの世も栄えないはずの悪は知らぬ間にウイルスのごとく増殖の一途を辿る。
束の間の平和ほどに脆弱なものはなく、見せかけのハリボテほど空虚に思えるものもない。
自身が見ている平和のような世界が、実は見えない悪に満ちていたと自覚してしまったらどうなるだろうか。
それは元の世界である地球だろうと、本作の舞台である異世界だろうと、些末な違いはあれども大体は似通っている。
かつて8年ほど前、とある伯爵令嬢は親である伯爵夫妻によって人目の届かない場所に幽閉されていた上、使用人でも嫌気が差すであろう作業を強制し、まるで奴隷のように扱われていた。
ご貴族様のご都合主義という、元の世界のフィクション作品でも読んですぐ理解できるほどのありふれた悪意の象徴そのものであった。
そんな劣悪な環境に置かれた経験をしていたのは誰あろう、今ここで地図を広げ棒立ち状態になっている女性である。
「んあ~めんどいわぁぁ~~あんまりやぁぁあぁ~~~」
頭をくしゃくしゃさせながら地図と格闘するこの女性こそ、かのアルカレンス・ウィル・ナイエルディア伯爵令嬢。
今の出で立ちから、伯爵令嬢というよりは一般的な冒険者と言った方が適切だろう。
「うちんとこのギルドのおっちゃんもお人が悪いわぁ。」
彼女は今、世界の中心で迷っていた。
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