ええか、ボンクラ。わしが替え玉したらビーンボールや。
試合は両チームのピッチャーが踏ん張りを見せる中、俺の手加減なしのスリーベースヒットの後。
みのりんがチャー・シュー・メーン!!と叫びながら、センター後方への犠牲フライを放ち勝ち越しとなったところで………。
「かえで、最後は俺はクローズしてやろう」
「分かった。しくんなよ」
ここまで4回を1失点という熱投を見せたかえでから、マウンドを譲り受けたアライパパ。
バッターにはロンギー家のパパを迎えた。
チームをワールドチャンピオンに導いた正捕手と4割打者の対決。
思わず魅入ってしまうような男と男の勝負だ。
ダイナミックに振りかぶり、俺の右腕が唸りを上げる。渾身のストレート。
そのゴムボールがロンギーの背中へ一直線。そのままバチーンとぶち当たった。
「ヘイ、ヘボピー!!どこ投げてやがんだ、クソ野郎!」
「なんだと、のろまヒゲ!!そんぐらい避けやがれ!!」
春の公園ベースボールの時の因縁がありますから。向こうからしたら、わざわざ娘をどかしてまでマウンドに上がってきたわけだから、やりやがったなという気持ちでしょう。
こっちはみのりんが出したサインに従っただけなんですがね。
とはいえ、野球人として1度始まってしまった戦いを途中で投げ出すわけにもいかない。
マウンドとバッターボックスそれぞれから怒りという感情だけを胸に歩き出した男2人の闘志がぶつかり合うと、そこは戦場と化す。
俺は彼のヒゲを掴み、彼は俺のおケツを掴む。そこに互いの子供達が一緒になって群がり合う乱戦。
平柳君とロンギーの奥様の爆笑がこだまする中、1番活躍したのは結局はみのりんだったのだろうか。
ゴーン、ゴーン、ゴーン!!
「おっ!この音は!」
「へっ、鐘に救われたな、4割打者」
真っ赤なお召し物に愛用のフックショット東洋系の美人エージェントが鳴らしたわけではない鐘の音。
レストランエリアの夜の部の始まりを告げる音である。
この乱闘は、普通に終わりだと言っても聞かないだろうこの場の終焉を告げるもの。試合は改めて仕切り直しという判断となった。
みんなで最後にホームベースのところに集まって記念撮影をして、お開き。
最終日は、この地に来たチームシャーロットのみんなでバーベキューを楽しむ予定となっている。
ですからこの日の晩御飯は、魚とお野菜中心のコース料理を堪能したのだった。
楽しい楽しい優勝旅行も気付けば最終日。そうなると向かう先はお土産屋さんである。ショッピングモールの西側にあるエリアは全てお土産屋さん。
マイアミのリゾート地ですから、ブランド物の宝石類やら、バッグやらお財布やら。ネイティブなアイテムもあるし、トロピカルな食べ物もたくさん。
その中でも人気なのは、誰もが聞いたことのあるチョコレートブランドのお店である。
「おーい、クロちゃんと桜井さんちのお兄ちゃん達、友達とかへのお土産は準備したかね?」
「「いーえ、今からです」」
「それなら、このチョコレートでよかったら、新井さんが買ってあげようか?何個くらい欲しいんですの?」
「「本当ですか!?」」
「おう、友達は何人いらっしゃいまして?」
シャーロットウイングスのオーナーさんは、よほど初優勝が嬉しかったみたいで、かなりの額のお小遣いも渡して下さった。
クロちゃんと桜井さんにも分配したのだが、結構余ってしまう感じだったので、最終日に大盤振る舞いである。
この店で人気という、チョコレートやナッツ、クッキーなどが1箱になった50ドルのセットがあったので、これの在庫数を確認。
桜井さんには、大学生にお姉ちゃんと高1弟君。クロちゃんには中学生と小学生の兄弟がいるので、クラスメイトや担任の先生方や、お世話になってる先輩やご近所さんにも配りなと、1人60ずつくらいの注文になった。
それを聞いたお土産屋さんの店主が涙を流しちゃってさ、嬉しくて。体おっきい男の人なんだけども。
向こうのビーチでやっているアニキの店の在庫も確認します!みたいな感じで、手を震わせたまま、スマホを操作して電話しているのが印象的だった。
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