タダ旅行サイコーですわ!

そう言ったミズカサアナウンサーは、こっそり家族でワイハーに行く算段を立てていたのかもしれない。旦那様は、俺がそこにいるかどうかしか考えてなさそうなので。


すると、前村君の奥様が提案する。



「それなら、マイアミのリゾートに行くのなんてどうです?小さい子が楽しめるアクティビティなんかもありますし、今の時期はとっても過ごしやすいですよ!」



「なるほど!それはアリかもね!ちなみ皆さんは、いつ頃帰国するご予定で?」



「うちは12月の20日の便で。前村さんは?」



「私たちは12月の頭には。ちょっと夫婦で収録があったりしてまして」



「そうなんですね。時くん、私達はどうする?」



「そうねえ。収録と言えば、11月の中頃からオファー来てるのよね。出るかはまだ分からんけど。CM関連は12月からにしてもらったから、そのくらいですかね」



「それじゃあ、時くん。オーナーさんに私たちの優勝旅行をおねだりしてきてよ」



「あはは、そうだな。おねだりしてみるか~。いけるっしょ、多分」




アメリカに来てびっくりしたというか実感したのは、メジャーの選手は本当に家族との時間というのを大切にしますよね。



ですから、ワールドシリーズに勝利して、世界イチやー!!と、はしゃいだわりとすぐ後。


互いにファイトしあったシャンパンをシャワーで流した直後から、明日は家族でドコドコに行くぜ!とか。


明日の飛行機で地中海に行ってくるぜ!などと、もうそんな話をロッカーでしているのだ。


メジャーナンバーワンチームになったんですから、もっとその喜びを分かち合いましょうよ!


という感じで俺はいたのだが。


ロッカーに訪れたマネージャーに、取材とかは一切入れないでくれよ、朝には本土に居ないんだからと、結構みんなそんな感じ。


グラウンドでは、エネルギッシュにはしゃいでいた奴程、しばらく時間が経ったら、スンとなって、冷静にロッカーを片付け始めていたりする。



ユニフォームを脱いだら一切インタビューや取材に応じない選手も多いんですわよね。



試合後になると、まあまあの頻度でメディアがロッカールームまで突入してきて、半裸状態の選手へのインタビューが許されている理由が分かりますわ。



ともかく優勝した後もそんな感じでしたから、最多勝のウェブ、バーンズ、俺。ヒックス、ザム、平柳君、前村君のチームに別れて朝まで各番組に、出演、出演ですよ。



最後は朝6時のニュース番組のタイトルコール何回もさせられて帰ってきましたからね。



エブリワン、シャーロット~!って言って。適当にサムライとかニンジャという言葉を言っておけばウケる手応えのない現場だ。


反吐が出る。



まあみんなとそんな話をしたりして、餃子やらなんやらをジュージュー焼いて、ビンのビールを煽りながらキャッキャッしてました。



そして、友達やら日本野球界の方々やら、お仕事関連の方々からお祝いメッセージなどがたくさん飛んでくる中。

アメリカおばちゃんからもお食事のお誘いなんかがあったりして、結局2、3日はバタバタしてましたね。




ですから、優勝した4日後ですか。


シャーロット市内で大規模なパレードと、スタジアムでの労い式みたいなのがありましてね。


そこには、シャンパンファイトでぶっかけあった仲となったグランドオーナーが家族様達といらっしゃいましたから。


「僕たち、哀れな愚民にマイアミリゾートなる場所へのお導きを~!」


と言って、得意のジャパニーズちょんまげ土下座スタイルで、翌日の1面にも取り上げられた事案を発生させまして。


無事、ご招待に預かれることになりました。


後から聞いたら、最初からそういう話だったみたいですけどね。


ヨーロッパまで行けない選手はチラホラいますから。


ですから、その日のウエートや体をほぐすためのトレーニングは快調の中の快調。


何なら、今がシーズン中にもなかったくらいの絶好調でして、ちょっと試合したいなあと考えてしまうくらい。



そんなタイミングで、代表招集の通知が届いたのであった。



その代表戦が11月8日からでして。



今が10月21日。



23から5日間マイアミで遊べますから、意気揚々と家族でお出かけですよ。



マイアミプレミアムなんとかリゾートとかいう名前で。


そのリゾートの敷地の中に、遊園地、動物園、水族館、アクティビティランド、自然公園、博物館や歴史館。巨大なショッピングモールに、競技場やアリーナ、屋内プールランド。ビーチも4つある。日本で人気のラーメン屋もある。



とにかくすごい場所である。



体が1つや2つでは足りないくらいだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る