2. 未解決


 湯卯穂村男女失踪事件(ゆうほむらだんじょしっそうじけん)とは、2004年8月にF県G郡湯卯穂村で発生した失踪事件。事件発生現場となった湯卯穂村が当時「ゆうほ」のもじりで「UFO村」として一種の村おこしを行っていた事から「UFOによる誘拐」などと一部メディアで取り上げられ、「聖地巡礼」と称して村を訪れる野次馬の存在が問題になるなど、世間の注目を集めた事件である。

 発生から20年となる2024年9月現在まで解決には至っておらず、未解決事件となっている。



 ・事件概要

 2004年8月24日の午前9時ごろ、A(失踪者の一人。男性、当時19歳)は「B(失踪者の一人。女性、当時19歳)と映画を見てくる」と告げて実家の金物店を出、それ以降連絡が取れなくなった。同じ時間帯、Bも同様に「Aと遊んでくる」と母親に告げて外出し、連絡が途絶えた。

 事件当時のAとBは数年前から交際関係にあり、それぞれの家族もその事を認識していた。二人が休日にバスで街へ出かけて夕方以降に帰って来るのは珍しい事ではなく、それが結果的に事件の発覚を遅らせることとなった。



 ・捜査

 翌日の早朝、Bから何の連絡も無い事を心配したBの両親がAの家を訪ね、同じく連絡が無いのを不審に思っていたAの両親と相談した末、捜索願を出す事を決めた。

 G警察署は当初、失踪したのが交際している若年の男女という事もあり、家出や駆け落ちの可能性が高いと見ていた。しかし、双方の両親が交際を好意的に認めていたこと、A、B当人らが失踪の数か月前から結婚をほのめかすような発言を度々家族の前でしていたことなどから自発的に失踪する動機が見当たらないと判断し、本格的な捜索を開始した。


 3000人程度が暮らす人口密度の低い村落で起きた事件ということもあって捜査は難航したが、周辺住民への聞き込みなどから失踪当時の状況が判明した。それによると、

 ・失踪した二人は恐らく「役場前」バス停で待ち合わせ、午前9時10分発の市街地行きバスに乗車する予定だった(いつもそうしていたという役場職員の証言)。

 ・しかし事件当日、午前9時10分発のバスに「役場前」から乗車したAB両名と顔見知りの高校の同級生によれば、バス停に二人は現れず、バスの車内にも二人の姿はなかったという。

 ・自宅を出てからの二人の目撃証言がない事と併せ、二人はそれぞれの自宅から「役場前」バス停に向かう途中で何らかの事件・事故に巻き込まれ失踪したものと思われる。


 一方、この推測には不自然な点が幾つか存在するという指摘もある。それは、

 ・「役場前」バス停はAの自宅から徒歩7分、Bの自宅からは徒歩5分とかなり近い場所にあり、家を出てから失踪までの推定時間が短すぎる。

 ・それぞれの自宅からバス停までは開けた広い道が続いており、また二人が失踪したと思われる時間帯には道の脇の畑で農作業に出ている村民が複数存在した。村内で顔の知られた当時19歳の男女二人が日中に一切の目撃証言なく行方をくらませるのは不可能に近い。


 2024年現在も捜査は続いており、G署は引き続き情報提供を呼び掛けているほか、事件発生からちょうど20年となる2024年8月24日にはF駅でAの母とBの父(Aの父とBの母は既に他界)がAB両名の顔写真付きのビラを配り事件解決を願う呼び掛けを行ったが、上述の疑問点を解消する手掛かりは発見されていない。



 ・目撃証言

 事件発生当時から現在に至るまで、主に湯卯穂村の住民から以下のような証言が寄せられたが、いずれも有力とは考えられていない。


 ・事件当日、村の近くを不審な車両(バン)が走行していた。

 →ナンバープレートを撮影していた村民の情報提供により、たまたまG郡周辺のロケに訪れていたテレビ制作局の車両と判明。

 ・二人の失踪前日深夜、不審な人物(証言によれば80歳前後の老婆)がBの家の塀を見上げて立ち、「むすばれぬ」「つれてゆく」などと意味不明な言葉を発していた。

 →当初はこの不審者が有力な被疑者候補と考えられていたが、証言を元に作成した不審者の外見上の特徴と一致する人物は事件発生時点の10年以上前に既に他界していた村民であり、その後の捜査で不審者の存在自体が自身の勘違いであると情報提供者が認めた。

 ・二人の失踪前日、夜空を未確認飛行物体(UFO)のような円盤が横切るのを見た。

 →その後の捜査でも特に事件との関連は認められず。



 ・事件後

 この事件は小さな村で起きた失踪事件であったが、前述の通り「UFO村での神隠し」として一部メディアでセンセーショナルに取り上げられ、「二人はUFOに連れ去られた。この村はUFOの発着基地だ」などと主張する団体が村を観光するツアーを組むなど、AB両名の家族の心情を考慮しない野次馬的人々の存在が問題となった。湯卯穂村は公式にそうした「無遠慮な訪問」に対しての警告を村の入り口などに掲示したほか、「UFO村」としての村おこし施策自体もその大半を取りやめた。湯卯穂村はこの件で少なくない経済的損失を負い、2004年以降の人口は減少の一途を辿っている。


 また、2024年にはBの自宅の玄関前にBの筆跡に似せた字で「いきたくない いきたくない」と何十枚にも渡って書かれたいたずら目的の手紙が置かれるという事案が発生した。警察は住居侵入の疑いがあるとして差出人についての調べを進めている。



 関連項目

 ・未解決事件

 ・行方不明

 ・日本の失踪事件

 ・幽歩(ゆう-ほ。死者が出歩くこと)









 この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

こわい話のよせあつめ 今日躁 極 @EtGmyfavgame

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ